「多結晶グラフェンは意外と脆い」 ライス大が七員環への張力集中とひび割れ現象を解析

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ライス大学の研究チームが、多結晶グラフェンの粒界に発生する結晶欠陥に起因するひび割れなど、グラフェンの脆化について報告している。多結晶グラフェンでは、結晶ドメインの面積が広くなるにつれて脆化も進む。粒界のネットワークが存在することで結晶粒(グレイン)の接合部からひび割れが生じ、機械強度が50%程度低減するという。2013年3月25日付けの Nano Letters に論文が掲載されている。

3つのグラフェン・ドメインが接合する部位のシミュレーション。粒界(GB)に生じた七員環に張力が集中する (Credit: Rice University)

基板上にCVD成長させた多結晶グラフェンでは、炭素原子の六員環構造を持つグレイン同士が接触する粒界部に五員環や七員環といった結晶欠陥が生じる。こうした欠陥があると、六員環だけで構成される純粋なグラフェンに比べて、機械強度が弱くなると考えられる。

研究チームは今回、3つのグラフェン島の接合部にみられる七員環が、ひび割れの発生しやすい最も脆弱なポイントであることを計算によって示した。グラフェン島間の粒界の終端部にあたるこうしたポイントが、脆化の起点になるという。

ライス大の理論物理学者 Boris Yakobson 氏によると、粒界で起こる現象に関する過去の研究では、粒界を1本の無限長の線と見なしてきた。その方が、全体の代表として単一のセグメントだけに注目すればよくなるので、計算がシンプルになるからであるという。しかし、現実のグラフェンは無数の結晶粒からなるパッチワークであり、粒界の線はネットワークを形成している。Yakobson 氏は、このような現実のグラフェンにみられる粒界のネットワークに即した計算を行うべきだと考えた。

有限長の粒界における転位堆積の長さとストレス蓄積の関係 (Credit: Rice University)

 
分子動態シミュレーションと古典的な数学的解析手法を用いた計算の結果、グラフェンのパッチワークにおいて、粒界が「てこ」のような働きをすることが明らかになった。てこの作用で転位堆積による張力の増幅効果が生じ、3つのドメインの接合部に生じる欠陥や2つのドメイン間の粒界部に張力が集中するという。「詳細は複雑なものだが、基本的には、てこが長ければ長いほど最弱ポイントでの力の増幅が大きくなる」と Yakobson 氏は説明する。

最弱ポイントに力が集中することで、この点からひび割れが始まり、まわりに広がっていく。この現象は、金属結晶における Hall-Petch 効果と非常によく似ている。ただし、グラフェンにおける現象発生機構は Hall-Petch 効果 とは大きく異なっているため、研究チームはこれを擬似 Hall-Petch 効果と呼んでいる。

金属におけるひび割れは、大きくなるにつれて鈍っていき、やがて止まる。一方、グラフェンのように割れやすい材料では、1つのひび割れが相当長く伸びていく場合がある。多結晶グラフェンの品質に関しては、ドメインの面積が大きいものが望まれることが多いが、残念ながらドメインが大きくなればなるほど機械強度は弱まる。グラフェンのパッチワークに機械強度を持たせたい場合には、無欠陥の単結晶グラフェンにするか、なるべく小さなドメインで構成されたグラフェンを使ってストレス集中を減らしたほうがよい、と研究チームは指摘している。


発表資料

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