NIMS、無機層状結晶が水溶液中で急速に100倍伸び縮みする珍現象を発見

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物質・材料研究機構(NIMS) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の佐々木高義氏、馬仁志氏、耿鳳霞氏らの研究グループが、無機層状結晶が生きた細胞のように水溶液中で100倍の大きさにまで数秒で伸び縮みするという極めて珍しい現象を発見した。2013年3月27日付け Nature Communications に論文が掲載されている。

層状結晶の膨潤・収縮の様子をとらえた偏光顕微鏡像 (出所:NIMS)

厚さ2~3μm、横幅30μm前後の層状チタン酸化物の無機板状結晶が、アミノ基とヒドロキシ基を両端に持つ有機化合物(2-ジメチルアミノエタノール)の希薄水溶液中で、層の重なり方向に100倍の長さまで1~2秒でアコーディオンのように伸びることを見いだした。伸びた結晶は分割されることなく安定に存在し、酸を加えることにより、数秒で元の状態に戻ることが分かった。用いた層状結晶は厚さ1nm弱の層が3000枚前後積み重なった構造を有しているが、層と層の間隔を100倍に膨らませる大量の水が瞬時に出入りし、その過程で層がバラバラにならず、一体として振る舞うという。

最大に膨潤した状態では含水量は97%超に達した。普遍性のある現象であり、層状チタン酸化物以外の層状結晶でも、また2-ジメチルアミノエタノールだけでなく、同等な特徴(非対称な分子構造)を持ったアミンを使っても同様の膨潤が起こるという。

図は、層状結晶の膨潤・収縮の様子をとらえた偏光顕微鏡像。写真(0 s)中に出発結晶を矢印で例示した。これにアミン溶液を作用すると、0.53 s後の写真中に矢印で示したような過渡的な状態を経て、16.4 s後の「ひも」状に伸びきった状態となる。これに酸水溶液を滴下すると、「ひも」状結晶は収縮し、3.8 s後には矢印で示したような元の結晶に戻る。

無機層状結晶は水溶液中で層と層の間に様々なイオンや分子を取り込み、膨潤する反応性を示すことが知られているが、その膨潤度(層と層の間隔)は通常数割程度。水が大量に取り込まれて膨潤度が数倍に達する例はあるが、その場合には層同士の間に働く力が弱くなり、溶液全体を振り混ぜるなどの弱い外力を加えるだけで結晶が薄片に分割されていく。10倍を超える膨潤状態を安定に保持できることはほとんどないとされてきた。

今回の成果により、グラフェンなど2次元物質の合成プロセス(層状化合物の単層剥離)の理解が進み、制御性が向上することで、高品位ナノシートの高収率合成につながる可能性がある。また、生命現象などの重要なファクターとされながら、いまだ謎が多い狭い空間に閉じこめられた水の特異な挙動の理解に光を当てることになると期待される。


NIMSの発表資料

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