ジョージア工科大学とパデュー大学の研究チームが、木質材料を基板に用いたリサイクルの容易な有機太陽電池を開発した。太陽電池は、植物由来のセルロースナノ結晶(CNC)基板上に形成する。製品寿命を終えた太陽電池を常温で数分間水に浸すだけでCNC基板が溶融し、リサイクル可能な主要部品を分離することができるという。環境親和性の高い太陽電池技術として注目される。2013年3月25日付けの Scientific Reports に論文が掲載されている。
有機太陽電池は通常、ガラス基板またはプラスチック基板上に形成されるが、どちらもリサイクルしにくいのが難点とされる。ガラス基板を使用した太陽電池では、製造過程や設置時に破損した場合に使えなくなった材料を廃棄するのが難しくなる。石油由来の材料については環境親和性に問題がある。
一方、紙の基板は環境には良いが、表面が粗い多孔性材料であるため、性能面で限界があった。
今回使用されたCNC基板は木質材料から作られており、環境親和性が高い上に、表面粗さが2nm程度と低いのが特徴であるという。CNC基板上の有機太陽電池の変換効率は、いまのところ2.7%だが、研究チームは次の課題として、ガラス基板やプラスチック基板を使った場合と同等の変換効率10%超をめざすとしている。電極の光学特性を最適化することで目標を達成する計画であるという。
図1(a)は、太陽電池用フィルム基板を構成するCNCの透過電子顕微鏡(TEM)画像。(b)は、下の絵が透けて見える透明なCNCフィルム。(c)は、CNCフィルム表面の原子間力顕微鏡(AFM)像。
図2(a)は、CNC基板上の太陽電池のリサイクルに用いる溶液とろ過紙。0番の瓶に入っているのは蒸留水。1番の瓶は、太陽電池を蒸留水に浸した後のCNC再分散液。2番の瓶は、光活性層がクロロベンゼン中に溶けた溶液。水に浸した後に残る固形廃棄物をクロロベンゼンですすぐことで得られる。3番の瓶は、クロロベンゼンによる2回目の固形廃棄物すすぎで生成する溶液。4番のろ過紙上には、2回目すすぎ後の溶液をろ過した際の残渣が見られる。残渣の成分は、銀と三酸化モリブデン。図2(b)は、CNC基板上の太陽電池に着火したときの様子。2秒以内に燃え尽きた。炎の温度が低温なので高分子の成分だけが燃える。残った灰の中から金属成分を回収することができる。
ジョージア工科大学の発表資料
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