河津鉱が天然のトポロジカル絶縁体であることを発見 … ドイツ・スイス研究グループ

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マックス・プランク研究所、シュトゥットガルト大学、スイス連邦工科大学ローザンヌ校の研究グループが、天然の河津鉱(Kawazulite)にトポロジカル絶縁体としての性質があることを発見した。2013年2月26日付けの Nano Letters に論文が掲載されている。

図1 河津鉱のX線回折およびラマン分光による特性評価 (P. Gehring et al., Nano Letters (2013) doi: 10.1021/nl304583m)

河津鉱は、静岡県の河津鉱山で発見された鉱物で、一般に Bi2(Te,Se)2(Se,S) の組成を持ち、テトラジマイトに属している。ファンデルワールス力で結合した5重層の結晶構造を持っている(この結晶構造は1961年に Bland と Basinski によって報告された)。今回の研究で使われたサンプルは、チェコ共和国の旧金鉱から産出したものであるという。

図1a は、3~10mm大のサンプルの光学顕微鏡像。図1b は、リートベルト解析パターンをプロットしたもの。図1c は、11°から13.4°の範囲でのX線回折データのプロットを拡大したもの。図1d は、X線回折から得られたサンプルの単位セルの図。図1e は、励起波長633nmで測定されたサンプルのラマンスペクトルを表している。

図2 河津鉱の角度分解光電子分光 (P. Gehring et al., Nano Letters (2013) doi: 10.1021/nl304583m)

 
同サンプルの小さな結晶(0.7×0.7mm2)を角度分解光電子分光法で調べることにより、Γ点(k = 0)近傍での(111)表面の電子構造を測定したところ、図2a のデータが得られた。図2b は、このデータを下に作図したバンド構造である。バンド構造の中央部にディラック円錐形の分散が見られることから、河津鉱が天然のトポロジカル絶縁体であることが分かる。

トポロジカル絶縁体は、電子の流れをほぼ完全に遮断する絶縁体だが、その表面は金属のように電子が自由に移動できる良好な伝導体として振舞う。伝導度は通常の金属よりも高く、電子が質量をもたない状態(ディラック・フェルミオン)となって光速に近い速度で動けるようになり、通常は電子の動きの妨げとなる材料中の不純物の影響もなくなる。こうした特性から、トポロジカル絶縁体は電子回路やデータ保存デバイス用の有望な新材料とみられている。

河津鉱を機械的に剥離して得られた数十nm厚の断片は、バルクドーピングレベルが低く、低温下で 1000cm2/Vs とかなり高い表面状態のキャリア移動度を持っている。こうした電気特性は、人工的に合成されたトポロジカル絶縁体に比肩するものであるといえる。研究チームは、このような興味深い性質を持った天然鉱物が他にも存在している可能性があると指摘している。テトラジマイトやアレクス鉱に分類される20種類以上の化合物が、その有力候補であるという。


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