「エルピーダ倒産、円高のせいではない」中央大・竹内健氏@ナノ・マイクロビジネス展記念講演会

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中央大学理工学部 竹内健教授

「ナノ・マイクロビジネス展/ROBOTECH 記念講演会」が、2013年1月23日、ホテル グランドパレス(東京)で開催された。ナノ・マイクロビジネス展は、これまでのMEMS分野の技術展示会「マイクロマシン/MEMS展」を改称したもの。2013年7月3~5日の3日間、東京ビッグサイトで開催される。ナノレベルまで進化した微細加工技術とその応用分野をビジネスに直結させることをめざすという。

講演会では、中央大学理工学部電気電子情報通信工学科 竹内健教授と東京大学IRT研究機構 機構長 下山勲教授が特別講演を行った。本稿では、竹内氏の講演「日本の半導体・ナノ・マイクロ技術が世界で勝ち残るために」の概要を報告する。

最近、為替相場が円安方向に進む中で、安倍政権の金融政策ブレーンである浜田宏一氏(内閣官房参与・イェール大名誉教授)の「日本銀行がエルピーダメモリをつぶしたと言っていい」とする発言などがメディアで大きく取り上げられ、リーマンショック以降続いた円高ウォン安の状況にエルピーダ倒産の理由を求める論調が目立っている。これに対して竹内氏は、「エルピーダ倒産の原因は円高ではなく、マーケティングの失敗だった」と指摘した。

エルピーダの敗因はDRAM市場の成長性を読み違えたことにあった

 
エルピーダが注力していたゲーム機向けの高性能グラフィックDRAMは、ゲーム市場自体が専用ゲーム機から携帯電話用ゲームへと置き換えられていく中で、大きな市場と成り得なかった。エルピーダの競合であるサムスン、ハイニックス、マイクロンも同様に苦しい状況に置かれたが、ファブでの生産をフラッシュメモリ中心に転換していくことで何とか生き延びた。一方、フラッシュメモリへのシフトができなかったDRAM専業メーカーのキマンダとエルピーダは倒産に追い込まれた。

巨額の設備投資を行って微細化を行うと、基本的にデバイス単価は下がる。単価が下がることで市場が拡大して収益が上がれば、次の世代への投資に向けたサイクルを回すことができるが、DRAMについては微細化して単価が下がっても市場が伸びないという状況になっていたため事業として行き詰った。これがエルピーダ倒産の本質だったと竹内氏は述べた。

国内システムLSI事業の統合は「規模の不経済」を招く

 
また、ルネサスエレクトロニクスをめぐる状況については、「設計技術を含む様々なレベルで、日立・三菱・NECの資産が重複していたため、経営統合によってかえって非効率化や混乱を招いた」とした。最近の報道にみられる富士通やパナソニックのシステムLSI事業をルネサスと統合する動きに対しても、「規模の経済」ではなく「規模の不経済」がさらに進むのではないかと懸念を表明した。「これまで、巨額投資が必要な最先端プロセスを使用する製品では、少量多品種生産の成功例はない」とし、SoC分野での巨大企業のあり方に疑問を投げかけた。

一方、DRAMやSoCと比較して順調に推移している日本のフラッシュメモリ産業については、デバイス単体のビジネスではなく、NANDコントローラ、OS(ファイルシステム)、アプリケーション・ソフトウェアといった上位システムとのハード/ソフトの連携・統合が上手くいっている点が特徴であると評価した。

先端デバイス分野で日本の産業が生き延びていく上では、このようにハードとソフトの融合・協調が鍵になると竹内氏は見ているという。今後のビッグデータに対応したストレージソリューションとしては、高速性・大容量・不揮発性を兼ね備えたストレージクラスメモリ(SCM)の台頭が予想されるが、ここでもハードとしてのSCMだけでは日本の優位性を維持することは困難。アクセス頻度やサイズといったデータの特徴、過去のアクセス履歴などに応じて最適なメモリにデータを配置する制御ソフト技術を組み合わせた高付加価値なシステムを産官学で先行開発することが重要と説いた。(文・写真/荒井聡)


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