産総研、LPガスなどを燃料とするハンディ燃料電池システムを開発

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産業技術総合研究所(産総研)先進製造プロセス研究部門機能集積モジュール化研究グループが、持ち運びできるハンディ燃料電池システムを開発した。マイクロチューブ型の固体酸化物形燃料電池(SOFC)を用いており、電極構造をナノレベルで制御することによって、LPGなどの汎用的で運搬が容易な炭化水素燃料を直接利用できるようにした。急速起動性に優れ、持ち運びができることから、災害・非常時用、アウトドア用の電源としての応用が期待される。技術の詳細は、2013年1月30日~2月1日に東京ビッグサイトで開催される「nano tech 2013 第12回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」会場で展示される。

ハンディ燃料電池システムの外観と概念図 (出所:産総研)

SOFCは燃料電池の中で最も高い発電効率が期待されており、定置用電源としての実用化が進められている。次世代自動車など移動体用電源やポータブル電源への応用も期待されているが、実用化する上では、作動温度が700~1000℃と高いこと、急速起動性が低いことなどが問題となっている。

産総研ではこれまでに、600 ℃程度の低温で作動するマイクロチューブSOFCを開発し、SOFCの低温作動化によって急速起動性が向上し、水素燃料を用いて50~200W発電モジュールを数分以内で起動できることを実証(2009年9月の発表資料)。さらに、ナノメートルサイズのセリア(CeO2)系触媒層(ナノセリア)を電極に付加することによって、メタン燃料の内部改質による発電を450℃の低温で実証してきた(2011年1月の発表資料)。今回は、水素燃料やメタン燃料に比べて汎用的で運搬が容易なLPGなどの炭化水素を燃料とし、急速起動できる燃料電池システムの開発を行った。

USB機器接続時のブタン直接供給による急速起動試験 (出所:産総研)

 
LPGの主成分の一つであるブタンは、メタンよりも熱分解による炭素析出が起こりやすく、燃料電池に直接供給すると燃料極(負極)の劣化が急速に進行することが知られている。このため、従来の燃料電池システムでは、燃料電池へ供給する前に、高価な貴金属触媒を用いた外部改質器を用いてブタン燃料をあらかじめ改質する必要があった。今回、燃料極の基材全体に内部改質の機能を持つナノセリアを付加することによって、従来よりも耐久性を向上させたナノ構造制御電極を開発した。

今回開発したマイクロチューブSOFCは、この電極を用いることによってブタン燃料の直接供給でも安定した発電ができるという。耐久性の向上により、起動時のみに用いるLPGバーナーの排ガスでの急速起動も可能となり、マイクロチューブSOFCとして、従来の約半分の時間である2分以内で400℃に到達し、USB機器を駆動できた。ナノ構造制御電極は十分な内部改質機能を持つため、外部改質器を簡略化できるなど、燃料電池システムのコンパクト化や低コスト化に寄与できるとする。

従来電極(a)と改良電極(b)のブタン燃料を用いた発電後のSEM写真 (出所:産総研)

 
数時間以内に発電が不可能になった従来電極では、燃料極に含まれるニッケル触媒が析出した炭素に覆われ、さらに繊維状の炭素が成長していることが、発電後の燃料極の走査型電子顕微鏡(SEM)像から確認された。一方、ナノセリアを用いた改良電極では、24時間発電した後でも炭素の析出が見られず、ブタン燃料に対する耐久性が著しく向上していることが分かった。

直流5~36V仕様のマイクロチューブSOFCモジュール (出所:産総研)

 
今回、開発したナノ構造を制御した燃料極を支持体とした直流5~36V仕様のマイクロチューブSOFC発電モジュールを用いて、LPGカセットボンベを燃料とする「ハンディ燃料電池システム」を試作した。起動後、2分以内に直流5V駆動のUSB機器を作動できた。起動にはLPGバーナーのみを用いるため、外部電源を必要としない。災害・非常時用やアウトドア用、次世代自動車などの移動体用電源にSOFC発電システムを適用できる可能性が出てきた。


発表資料

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