JQI、原子の移動によって動作するコンデンサを開発。アトムトロニクスの実現めざす

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共同量子研究所(JQI)が、原子の移動によって動作するコンデンサを開発した。原子の動きに基づくデバイス技術である「アトムトロニクス」実現に向けた成果として注目される。2013年1月7日付けの Scientific Reports に論文が掲載されている。

図1 原子コンデンサの容器として機能するレーザー光のパターン。青い部分に光が集束している (Source: JQI)

電子の動きの操作に基づくエレクトロニクス、電子のスピンを利用するスピントロニクスに対して、原子を使ってこれらと同様なデバイス動作を実現しようとするのがアトムトロニクスである。原子固有の複合的な構造を利用することにより、これまでにない様々なアーキテクチャの可能性が生まれると考えられている。

JQIでは、電子回路の3つの基本要素であるレジスタ、コンデンサ、インダクタと同等のものを原子回路で実現することに取り組んできた。今回の研究では、レジスタと接続して放電動作するコンデンサに似た原子デバイスの作製に成功し、その特性評価を行った。

具体的には、まずルビジウム87の原子を磁気光学トラップ内で冷却し、二室に分かれた微小な容器の一方の部屋に溜める。この容器は、研究チームが「自由空間原子チップ」と呼ぶデバイスの一部である。容器といっても固体ではなく、実体はレーザー光のパターンであり、一定パターンに集束したレーザー光によって真空チャンバ内に浮遊する原子を捉えて操作することができる。

図2 原子コンデンサの放電動作。時系列は左→右、上→下 (source: JQI)

 
図1は、二室に分かれた原子保持容器を表している。光学トラップがレーザー光バリアを形成しているため、試料中のすべての原子は最初、片方の部屋に閉じ込められた状態となっている。ここでバリアを解除すると、自由になった原子が二室をつなぐチャネルを通って部屋の間を移動するようになる。この原子の流れが、従来の電子回路におけるレジスタと接続されたコンデンサの放電に相当するという。原子の流れの速度は、チャネルのくびれの直径によって決まる。くびれ径が狭ければ狭いほど、原子は移動しにくくなる。原子の移動しにくさは電子回路でいう抵抗に相当する。

図2は、原子コンデンサの放電動作を撮影したもの。容器の右半分に溜まっていた原子が磁気光学トラップから解放され、容器中央のチャネル(幅340μm)を通って左側に移動していく様子を5ミリ秒間隔での原子密度の変化で画像化した(各フレームは、8回の独立した実験のデータを平均化している)。一定条件の下で、原子は容器の左右を行ったり来たりするようになる。この振動を適切に制御することで、原子回路のインダクタンスとして使うことができると考えられる。

研究リーダーの Wendell Hill 氏は、「完全な原子回路を実現するための試みは始まったばかり。まだ最初期の段階に過ぎない」と話す。次の目標は、今回の原子をボース・アインシュタイン凝縮の状態にし、原子コンデンサ、原子レジスタ、原子インダクタの機能開発を進めることであるという。さらに、ダイオードやトランジスタ、バッテリー、交流回路、直流回路といった要素も、原子を使って作製していきたいとする。これらの要素は、原子ジョセフソン接合や超伝導量子干渉素子(SQUIDS)など、自然の原子を利用した様々なデバイスに使われるようになると考えられている。


発表資料

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