ホタルのウロコを模した表面構造でLEDの光取り出し効率1.5倍 … ベルギー・ナミュール大ら

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ベルギー、フランス、カナダの研究チームが、LEDのデバイス表面にホタルの腹部にみられるウロコの形状を模倣した構造を形成することによって、光の取り出し効率を1.5倍以上高めたと報告している。LED表面を構造化することで光の取り出し効率を高める技術は従来からあるが、その多くはサブミクロンオーダーの微細構造の形成を必要とする。一方、今回の技術は、実際のホタルのウロコと同じサイズである数μm程度という比較的大きな構造によって、大幅な効率改善が見込めるという特徴がある。2013年1月発行の米国光学会誌 Optics Express および Energy Express に関連論文が掲載されている。

図1 (a)今回の研究のモデルとなったパナパ産ホタル。(b)ホタルの発光器官上にみられるクチクラ構造のSEM像。(c)光伝播のシミュレーションに使用されたモデル。突起周期10μm、突起高さ3μm (Annick Bay et al., Energy Express (2013) doi: 10.1364/OE.21.00A179)

研究を行ったのは、ベルギーのナミュール大学とルーヴァン・カトリック大学、カナダのシャーブルック大学、欧州シンクロトロン放射光研究所(ESRF)ら、国際共同チーム。パナパ産のホタルをモデルに選び、腹部の発光器官の形態を詳細に分析した。

特に、ギザギザ形のウロコでできたクチクラ層に着目した。ホタル以外の鞘翅目の昆虫では腹部のウロコは平坦に並んでいるものが多いが、ホタルの腹部にはギザギザ形の段差のあるウロコがみられ、これが光の散乱に寄与し、光の取り出し全体に影響を及ぼしているという。ウロコの列における突起間の距離は平均10μm程度であり、放出される光の波長よりは長いが、通常の鞘翅目のウロコに比べると非常に小さい。突起の高さにはバラつきがあるが、3μm程度であることが多い。

図2 理論考察したLEDデバイスのスケッチ (Annick Bay et al., Energy Express (2013) doi: 10.1364/OE.21.00A179)

 

図3 ギザギザ形のフォトレジストパターンの周期と高さによる光取り出し効率の変化。白い十字ポイントの位置(p = 5μm , h = 5μm )が実験で用いたデバイスの設定 (Annick Bay et al., Energy Express (2013) doi: 10.1364/OE.21.00A179)

 
このウロコを模倣した構造をGaN系LEDデバイスの表面に形成した。このデバイスの発光出力を直接測定したところ、表面にギザギザのないデバイスと比較して68%の出力増加がみられた。図2は、理論考察したLEDデバイスのスケッチ。バルクのGaN層上にNi-Au合金による膜厚10nmの電流拡散層を成膜し、その上にギザギザ形のフォトレジスト層を形成する。ギザギザの周期 p と高さ h を調整することで光取り出し効率を最適化できる。シミュレーションによる光の取り出し効率は、周期 p = 5μm、高さ h = 5μmとしたときに平坦な表面と比較して55%増加した。

このギザギザ構造は、簡易かつ拡張性の高い通常のフォトリソグラフィの手法を使って形成することができる。プロセスとしてはまず、LEDデバイス形成後のウェハー表面にスピンコートによって感光性レジストを均質に塗布して硬化させる。個々のデバイスに対して光の照射を適切に行うと、照射光の強度に比例してフォトレジストが深さ方向に感光する。感光した領域は容易に除去可能となるので、大面積ウェハー上に任意の形状を精密に形成することができる。


米国光学会の参考資料

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