SLACとスタンフォード大、タマゴ型のリチウムイオン電池正極で従来比5倍超の正極容量を実現

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米SLAC国立加速器研究所とスタンフォード大学が、新設計のタマゴ型リチウムイオン電池正極を作製し、既存の商用電池の5倍超の正極容量を実現。正極容量として世界最高値を更新したとしている。正極材に硫黄を使用しており、1000回の充放電サイクル後も初期状態の70%程度の容量を維持できるという。2013年1月8日付けの Nature Communications に論文が掲載されている。

硫黄の「黄身」と多孔質二酸化チタンの「殻」から構成されるタマゴ型正極粒子。スケールバーは2μm (Zhi Wei Seh et al., Nature Communications (2013) doi:10.1038/ncomms2327)

正極材に硫黄を用いることでより多くのリチウムイオンが吸蔵できるようになり、電池容量が上がることは20年程前から分かっていた。しかし、硫黄正極には重大な欠点が2つあるため未だに商用化に至っていない。

1つ目の問題は、放電中にリチウムイオンが硫黄内に入り込むときに、リチウムイオンが硫黄原子と結合して生成される中間化合物に関するもの。この中間化合物は硫黄正極の性能にとって重要な役割を持っているが、分解されやすいため、正極容量が制約されてしまう。

2つ目の問題は、リチウムイオンの流入によって正極が約80%膨張するということである。中間化合物の分解を防ぐために保護用のコーティングを施すと、正極の膨張でコーティングが破壊されてしまい、電池として使えなくなってしまう。

硫黄ナノ粒子のリチウム化プロセス。(a)はコーティングなし、(b)は膨張によってコーティングが壊れる。(c)が今回のタマゴ型正極粒子 (Zhi Wei Seh et al., Nature Communications (2013) doi:10.1038/ncomms2327)

 
研究リーダーのスタンフォード大学材料科学・工学准教授 Yi Cui 氏は、こうした問題を解消するため、微小な硫黄の球体を多孔質酸化チタンの固い殻で包んだタマゴ型の正極材を考案した。タマゴの黄身と殻のあいだの白身に相当する部分は空隙となっており、このスペースによって硫黄の膨張が吸収されるようになっている。放電時にはリチウムイオンが殻を通り抜けて硫黄に結合し、硫黄の膨張によって空隙が埋まるが、殻を破壊するところまでは膨らまない。同時に、殻には、電解質溶媒によって中間化合物が分解されるのを防ぐ働きもある。個々の正極粒子のサイズは800nm径と小さい。

Cui 氏のグループは、炭素負極の10倍超の容量があるシリコン負極の開発も行っている。こちらについても、タマゴの黄身と殻のデザインを使って、充放電サイクル1000回での容量維持を実現している。次の研究課題は、タマゴ型正極とタマゴ型負極を組み合わせることで高容量・長寿命のリチウムイオン電池になるかどうかを調べることであるという。


発表資料

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