バークレー研究所ら、人工筋肉などへ応用可能なマイクロアクチュエータ開発。二酸化バナジウムの構造相変化を利用

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米ローレンス・バークレー国立研究所とカリフォルニア大学バークレー校の研究チームが、二酸化バナジウムを利用したマイクロアクチュエータを開発した。髪の毛より細いサイズのアクチュエータが指を曲げて「おいでおいで」するような動画が公開されている。圧電材料を用いた従来のアクチュエータより大きな動きを実現でき、ヒトの筋細胞の1000倍程度という強い力を出せるという。マイクロ流体、薬物送達、人工筋肉などへの応用が期待される。2012年11月16日付けの Nano Letters に論文が掲載されている。


強相関電子材料の一種である二酸化バナジウムには、相転移温度である67℃を境に電気特性や結晶構造が変化する性質がある。67℃より低い温度における二酸化バナジウムの結晶格子構造は単斜晶であるが、67℃を超えて温度が上がるとルチル型の正方晶に変化する。これに伴って体積の収縮が起こる。今回のマイクロアクチュエータでは、この性質が利用されている。

マイクロアクチュエータの動作。相転移温度付近での15℃の温度差で伸びたり丸まったりする。スケールバーは50μm (Source: Berkeley Lab)

二酸化バナジウムの自立型細片の表面にクロムの金属層を形成する。微小な電流またはレーザー光のフラッシュによって細片を加熱すると、二酸化バナジウムが収縮することで細片全体が指のように曲がり、アクチュエータとして動作する。

二酸化バナジウムを用いた長さ数十μmのマイクロアクチュエータでは、数十μmの変動量を得ることができるので、アクチュエータ長と変動量の比を取ると最大で1となる。これは、圧電駆動のマイクロアクチュエータよりも遥かに大きな値である。また、仕事密度は0.63J/cm3超、動作周波数は最大6kHzに達する。試作されたマイクロアクチュエータはワイヤ型だが、これを平面や三次元形状に集積化すれば、アクチュータの機能性をさらに高めることも可能であるとしている。

次の目標としては、「捻りマイクロアクチュエータ」の開発が掲げられている。捻りアクチュエータは、ギアやシャフト、ベルトなどによる複雑な機構であるため小型化は難しいとされているが、研究チームは今回開発した技術を応用して単層の薄膜によるシンプルな捻りアクチュエータが実現できると考えている。

なお、今回のマイクロアクチュエータの開発は、研究チームが取り組んでいた別のテーマから派生して思いがけず始まったという。もともとの研究テーマは、二酸化バナジウムなどの強相関電子材料にみられる電気特性と構造変化の関係を調べるというものだった。二酸化バナジウムは、上述した相転移温度67℃における結晶構造の変化と同時に、その電気特性も絶縁体から導体へと変化する。この2つの変化については、一方がもう一方を引き起こしているのか、それともたまたま相転移温度が一致する独立した現象であるのかが数十年来の論争となっている。研究チームは、二酸化バナジウムの単結晶ナノワイヤにおいて2つの相変化が分離できることを示し、それらが別々の独立して起こる現象であることを実証した。

この実験では相転移が起こるときに長さ100μmのワイヤが1μm程度に縮むため、すぐにワイヤの接点が外れてしまうことに苦労させられた。しかし、そのことがきっかけとなり、厄介な現象を逆に利用するアイデアとしてマイクロアクチュエータの着想につながったのだという。


発表資料

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