ライス大ら、つる植物の抽出成分でリチウムイオン電池正極材を作製

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ライス大学とニューヨーク市立大学シティカレッジの研究チームが、つる植物セイヨウアカネの地下茎から抽出した有機色素プルプリンを原料とするリチウムイオン電池正極を開発したとのこと。環境親和性の高い植物由来の電池材料として注目される。2012年12月11日付けの Scientific Reports に論文が掲載されている。

図1 つる植物の多年草、セイヨウアカネ。地下茎に含まれる赤色色素が昔から染料として利用されてきた (Source: Wikipedia)

現在のリチウムイオン電池正極にはコバルト酸リチウムが使用されている。高価なコバルト金属を採掘し、高温処理によって正極材にするため、電池の製造コストは依然として高く、環境親和性も良くないと論文の筆頭執筆者 Arava Leela Mohana Reddy 氏は言う。

リサイクルの観点からも、コバルトの使用には問題がある。「2010年には、リサイクル処理が必要なリチウムイオン電池が100億本程度あったが、そうした処理には多大なエネルギーを消費する。電池からのコバルト抽出は高コストなプロセスとなる」と Reddy 氏は指摘する。

研究チームは今回、環境親和性の高い電池材料を探すため、様々な有機分子とリチウムとの電気化学的相互作用についてのテストを実施。その中で、プルプリン分子がリチウムイオンと最も結合しやすいことを発見したという。導電性を付与するために20%の炭素を添加したプルプリン正極を用いて、50回の充放電サイクル後に90mAhの容量を維持できるハーフセルを作製した。プルプリン正極は室温環境で作製でき、化学プロセスも非常にシンプル。Reddy 氏によると、農業廃棄物をプルプリンの原料として利用できる可能性があるという。

ニューヨーク市立大の化学教授 George John 氏は、リチウムイオンと有機分子の間の化学プロセスを正確に理解できたことが今回の研究のポイントであるとコメント。この理解によって、他の分子を利用したり、電池容量の向上を図ることができるようになるとしている。

Reddy 氏は今後、負極についても環境親和性の高い有機分子で代替し、それらの分子を分解しないような電解質を見つけたいと話す。数年以内に、完全にグリーンな二次電池の試作をめざすという。

図2 プルプリン電極の特性 (Arava Leela Mohana Reddy et al., Scientific Reports (2012) doi:10.1038/srep00960)

図3 プルプリン分子におけるリチウム化/脱リチウム化の機構と試料画像 (Arava Leela Mohana Reddy et al., Scientific Reports (2012) doi:10.1038/srep00960)

図2 は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)の1M溶液中におけるプルプリン電極の特性。電解液の溶媒組成はエチレンカーボネート:炭酸ジメチル=1:1とし、対向電極および参照電極にリチウムを用いた。(a)は、プルプリン電極のサイクリックボルタモグラム(スキャンレート:0.1mV/s)。(b)は、3.7V~1.5Vの範囲においてC/20レートでサイクル動作させたときのプルプリン電極の充放電曲線。(c)は、CレートをC/2、C/10、C/20と変化させたときの初回充放電曲線。(d)は、化学的にリチウム化したプルプリン(CLP)電極を3.7V~1.5Vの範囲においてC/20レートでサイクル動作させたときの充放電曲線。囲み内はCLP電極におけるサイクル数と放電容量の変化を示している。

図3 (a)は、プルプリン分子におけるリチウム化/脱リチウム化の機構を略図で示したもの。(1)は初期状態のプルプリン分子。(2)は、リチウム化プルプリンの中間体。(3)は、リチウムイオンがカルボニル基とヒドロキシル基に結合したリチウム化プルプリン。図(b)の(1)は、初期状態のプルプリン、(2)はCLPの写真。


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