九州大、第三世代の有機EL発光材料を開発。希少元素使わずに内部EL発光効率ほぼ100%

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九州大学最先端有機光エレクトロニクス研究センター(OPERA)の安達千波矢教授らが、新型の有機EL発光材料の開発に成功した。一重項と三重項励起状態のエネルギーギャップを小さくする分子設計により、希少元素を使わずにほぼ100%の効率で電子を光に変換できる。蛍光材料、リン光材料に続く、第三世代の低コスト・高効率発光材料と位置づけられる。2012年12月12日付けの Nature に論文が掲載されている。

TADFに基づく新しい発光メカニズムと新規有機EL発光材料の分子構造 (出所:九州大学)

有機分子の励起状態には、一重項励起状態(S1)と三重項励起状態(T1)というスピン多重度の異なるの2つの状態が存在する。電子とホールの再結合による励起子生成過程では、スピン統計則に従って、三重項励起子が75%の確率で生成され、一重項励起子が25%の確率で生成されるため、高効率な有機EL素子を実現するためには、三重項からの放射遷移を利用したリン光材料の使用が必要不可欠であると考えられてきた。しかし、強いリン光発光を有する有機金属化合物は、希少元素であるイリジウムや白金を含有することや、青色発光材料の安定性などに問題があった。

(a)トルエン中で測定した有機EL発光スペクトル、(b)波長365nmの光を照射したときの発光材料 (Hiroki Uoyama et al., Nature (2012) doi:10.1038/nature11687)

OPERAの研究では、一重項と三重項励起のエネルギー差(ΔE13)が極めて小さくなるように分子を設計することによって、三重項励起子を一重項励起状態へアップコンバージョンする熱活性化遅延蛍光(TADF)現象を利用した有機EL発光に取り組んだ。その結果、小さなΔE13を保持しながら、内部EL発光効率がほぼ100%を示す新しい発光分子カルバゾリルジシアノベンゼン誘導体(CDCB)の合成に成功。これを発光層に用いることで、外部EL量子効率19.3%程度という極めて高い効率を実現した。これは、電流励起下で生成された三重項励起子が高効率で一重項励起子に変換され、EL発光に至っていることを意味するという。希少元素を含有する有機金属発光材料を使わなくても、100%の内部EL発光効率が実現可能であることが確実となった。

今回の研究成果から、有機化合物の分子設計の自由度を生かすことにより、比較的単純な分子構造で励起電子状態を制御し、励起一重項と三重項間の遷移確率と各レベルからの放射失活過程を制御できることが明らかになった。OPERAでは今後、有機発光材料の理論確立とともに、TADFを発光中心に用いた有機ELデバイスの迅速な実用化をめざし、材料・デバイス・プロセス開発を統合。RGB発光材料を揃え、高耐久性素子の実現に向けた研究開発を進めていくとする。なお、この高効率な遅延蛍光現象は“Hyperfluorescence“と命名されている。


PDF形式の発表資料

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