北大、有機ホウ素化合物の安価・簡便な合成法を開発。重金属使わず触媒コスト1/20に低減

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北海道大学大学院工学研究院 伊藤肇教授、山本英治研究員らが、医薬品や液晶、有機EL材料などの原材料となる有機ホウ素化合物の合成が簡単・安価になる新しい方法「シリルボラン法」を開発した。合成に必要な触媒コストが従来比 1/20 となる上、重金属をまったく使わないという利点がある。2012年11月21日付の Journal of the American Chemical Society に論文が掲載されている。

従来の有機ホウ素化合物合成法とシリルボラン法の比較 (出所:北海道大学)

有機ホウ素化合物は、鈴木カップリング反応(2010年にノーベル化学賞受賞)で用いられる重要物質。この化合物から医薬品や液晶、有機EL材料などの高付加価値化合物を合成できる。しかし、有機ホウ素化合物を合成するには、パラジウムなどの高価な重金属触媒やリチウムなどの発火性金属が必要で、コストや安全面で問題があった。

研究チームは、ホウ素化反応で重金属触媒が必要になるのはホウ素化剤の反応性が低いためであると考えた。そこで、より高い反応性を持ち、重金属触媒を必要としない新しいホウ素化剤を探索。ホウ素化反応剤としてこれまで使われたことのないケイ素を含むホウ素化合物シリルボランと、安価な塩基性活性化剤の組み合わせに着目した。

シリルボランと塩基によるホウ素化反応 (出所:北海道大学)

ホウ素-ケイ素結合を分子内に含む反応剤シリルボランに塩基を添加すると、ホウ素上に塩基が配位したアート錯体が形成される。ケイ素基の求核性が高まるため、求電子剤と反応させるとケイ素化された生成物が得られる。研究チームは今回、反応系内で発生させたこのアート錯体に求電子剤としてハロゲン化アリールをはじめとする有機ハロゲン化合物を作用させると、ホウ素置換反応が高効率で進行することを発見した。一般的にハロゲン化アリールへの芳香族求核置換反応は起こりにくいとされているが、今回の反応は形式上、ハロゲン化アリールに対してホウ素アニオンの求核置換反応が進行したとみなすことができるという。

高価な重金属触媒を必要としない上、従来法に比べて多くの種類の有機ホウ素化合物を合成することができる。パラジウムや白金などの重金属触媒に比べて、塩基性活性化剤はコストが約1/20であり、有機ホウ素化合物の合成コストが大幅に低減される。反応の操作も簡便で、マグネシウムやリチウムなどの発火性化合物を使わない安全な方法であり、反応速度も速い。このため、有機ホウ素化合物を用いて作られている医薬品や液晶材料など最終製品のコストダウンや開発期間短縮につながると考えられる。また、今回発見されたケイ素を含むホウ素化合物の新しい性質を応用することで、別の反応開発の手がかりにもなるとしている。


PDF形式の発表資料

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