調査会社IMSリサーチが、今後10年間のハイブリッド車および電気自動車(HEV/EV)に関する市場予測を発表。2010年におけるHEV/EV市場では全体の77%をいわゆる「マイクロハイブリッド車」が占めていたが、この傾向はこの先さらに強まり、2020年に同タイプのシェアが89%まで拡大すると予想している。台数ベースでは、5800万台程度が2022年に生産されると見ている。
マイクロハイブリッド車とは、走行時は内燃機関で駆動し、ブレーキをかけたときの回生エネルギーをアイドリングストップからの再始動用モータなどに利用するタイプの簡易的なハイブリッド車を指す。基本的には内燃機関で駆動するので、厳密な意味でのハイブリッド車とは言えないが、IMSリサーチのアナリスト Ben Scott 氏は「アイドリングストップ車のメリットははっきりしている。運転の仕方によって、CO2排出量を最大5%削減できる」と説明する。各地域のCO2排出規制に適合するために、自動車メーカーはこの種のマイクロハイブリッド車を生産するようになっている。
駆動時のエンジントルクの補助に電気モータを使用する本格的なHEVと全面的に電気モータで走行するEVについては、市場の伸び悩みが続くと予想。消費者の関心は依然として低く、現在の世界経済の状況が売上の悪化を招いていると指摘する。EVについては、航続距離への不安や充電インフラの不足が依然として問題であり、電池技術もさらなる進化と低コスト化が必要。自動車メーカーも当然こうした問題を意識しており、無難な選択肢としてマイクロハイブリッド車を選んでいるとする。マイクロハイブリッド車は、プラグインハイブリッド車と比べて複雑でないというだけでなく、より手っ取り早く低コストで排出規制に適合できる手段であるといえる。
IMSリサーチは、マイクロハイブリッド車が短期・中期的な市場の中心になるとする一方で、長期的には燃料電池車がベストな解になるとの見方を示している。消費者の関心を再度喚起し、本格的HEV/EV市場を刷新するために、燃料電池車の導入を進める自動車メーカーも出てきている。その例として、ヒュンダイの燃料電池SUV「ix35」などが挙げられる。また最近になって、トヨタ自動車も2015年に燃料電池セダンを生産すると発表している。SUVやセダンは、2つの理由から燃料電池技術を最も適用しやすい車種であるといえる。1つは、大量の水素燃料を貯蔵するための十分な車体サイズを備えていること。もう1つは、セダンとSUVが最も利益率の良い車種であるため、燃料電池パワートレインに関連する追加コストを利幅で吸収できる可能性があるためであるとする。
エネルギー源の違いを除けば、パワートレインのシステムという観点から、燃料電池車はHEV/EVに似通っている。このため、既存のHEV/EVのバッテリは、水素燃料タンクおよび水素-電気変換ユニットにうまく置き換えることができる。また、バッテリ制御装置メーカーとそれに関連する半導体企業にとっては、燃料電池車において高電圧のバッテリ管理が必要無くなることが懸念要素となっているとIMSリサーチは指摘している。
発表資料
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