八幡平に中国大陸からレアメタルが飛来、リンや窒素も山岳湖沼に堆積して富栄養化 … 東北大ら

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液晶パネルやLEDの生産に用いられるアンチモンやインジウムなどのレアメタル(微量金属)が中国大陸から大気降下物として飛来し、その蓄積速度がここ30年間で急激に増加していることが、八幡平山岳湖沼の湖底堆積物の分析から明らかになった。東北大学大学院生命科学研究科の占部城太郎教授、愛媛大学の加三千宣講師、槻木玲美研究員らの研究チームが調査した。Science of The Total Environment (2013年1月号)にレアメタルに関する論文、Ecological Research (2012年第6号)に山岳湖沼の富栄養化に関する論文が掲載されている。

八幡平蓬莱沼の湖底から採集し、解析に用いた柱状堆積物(出所:東北大)

中国大陸由来の大気降下物にはリンや窒素などの栄養塩も含まれており、手付かずの自然と考えられていた八幡平の山岳湖沼でも富栄養化が進行していることも分かった。アンチモンやインジウムは人に対する毒性も報告されており、中国大陸由来の大気降下物が日本国内の生態系や人の健康に及ぼす影響の解明が必要であることを示している。

同研究チームは、湖底から柱状堆積物を採集し、鉛放射性同位体およびセシウム放射性同位体を用いた年代測定と堆積物に含まれるプランクトン遺骸や化学物質の分析を詳細に行うことで、モニタリングデータの存在しない過去100~200年間の湖沼の生物相の復元や環境の変遷を解明する技術の開発を行なっている。今回この技術を用いて、八幡平の八幡沼と蓬莱沼の環境変化を解析したところ、山岳湖沼でアンチモンやインジウムの他、錫、ビスマスなどの微量金属の堆積速度が、1960年以後に急増していることが分かった。

これらの微量金属は日本での採掘は現在行われておらず、湖底での堆積速度増加は集水域や近隣から混入したとは考えられない。アンチモン、インジウム、錫、ビスマスは中国での生産が多く、また石炭燃焼とともに浮遊微粒子(エアロゾル)として大気に放出されている。鉛の安定同位体比を調べたところ、八幡平の湖沼堆積物の鉛同位体比は日本ではなく、中国の石炭燃焼の際に発生する鉛同位体比と一致したことから、中国大陸から微量金属が飛来し湖沼の湖底に堆積していることが裏付けられた。

八幡平八幡沼(出所:東北大)

山岳地帯は住者も殆どいないため手付かずの自然が残されていると考えられてきた。しかし、大陸からの大気降下物は窒素やリンなどの栄養物質も運んでいる。八幡平の山岳湖沼では大陸からの大気降下物の影響で過去30年間に窒素やリンが増加し、植物プランクトンだけでなくそれを餌とするミジンコも増加するなど、富栄養化が進行していることが分かった。生態系の保全には地域だけでなく、大気降下物の発生地域を含めた広域的な取り組みが必要であることを示している。

ただし、湿原土壌は栄養物質の中でもリンを吸着する性質があるため、湿原に囲まれた八幡沼では富栄養化の進行は顕著ではなかったという。研究チームは、山岳地帯にある湿原が大気降下物の影響を緩和するうえで重要な機能を担っていることを示唆する結果であるとしている。今回明らかとなった微量金属の大気降下の増加が人の健康や生態系にどのような影響を及ぼしつつあるのかはよく分かっていない。


発表資料

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