「メキシコ湾の原油流出事故で使われた浄化用分散剤によって毒性が52倍増大」ジョージア工科大ら

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2010年に英BPが起こしたメキシコ湾での原油流出事故で、浄化のために使用された原油分散剤「コレキシト」(Corexit)の毒性を調査したジョージア工科大学とメキシコ・アグアスカリエンテス自治大学(UAA)の研究チームが、「コレキシトと原油が混ざることで毒性がもとの52倍増大する」という報告をまとめている。コレキシトの毒性については、以前から環境への影響を懸念する見方があった。Environmental Pollution 2013年2月号に論文が掲載される(リンク先はオンライン速報版)。

メスのワムシ(Source: Georgia Institute of Technology)

コレキシトの製造元である NALCO によると、コレキシトによって原油が微小な液滴に分散されることで、海洋微生物による生分解が可能になるという(NALCO の解説動画)。メキシコ湾での事故時には、米環境保護庁(EPA)の要請により、490万バレルの流出原油に対して200万ガロンのコレキシトが投入された。

研究チームは今回、コレキシトと原油の混合物が草食性のワムシに与える影響を調べた。ワムシは反応が出るまでの時間が短く、毒性物質への感受性があり、実験で使いやすいため、生態毒性学での毒性評価ではよく使われる生物である。

コレキシト:原油の混合比を、コレキシト9500A使用時の推奨値である1:10~1:50および事故現場での実際の値1:130に設定し、毒性を評価した。コレキシトと原油のもともとの毒性は同程度だが、2つを混合することでワムシに対する毒性が最大で52倍増加した。また、2.6%の濃度でコレキシトと原油の混合物を含む水中では、ワムシの卵の孵化が50%阻害されたという。

ワムシの卵は、毎年春に海底堆積物の中で孵化する。水柱環境(海表面から最大水深までの環境)で繁殖し、河口で稚魚やエビ・カニなどの食糧となるため、海の生態系を支える重要な存在であるという。

分散剤コレキシトの効果。原油が液滴化することで微生物分解が促される(Source: NALCO)

研究リーダーであるUAAの Roberto-Rico Martinez氏は、「原油流出の浄化を促すとして分散剤が事前承認されており、災害時には広く使われている」「しかし、その毒性についてはよく分かっていない。今回の我われの研究は、マコンド油井の爆発に続いて起こった毒性増大が、これまでかなり過小評価されていたようだということを示している」と話す。

ジョージア工科大 生物学教授の Terry Snell 氏は、「混合物の毒性の大幅な増加が、コレキシトを使用した原油分散のメリットを上回るのかどうかは、これからはっきりさせなければならないことだ」「恐らく、原油は自然に分散するに任せるべきなのだろう。時間はかかるが、そのほうが海洋生態系への影響は小さくて済むのではないか」とコメントしている。


発表資料

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