BNL、リチウムイオン電池内部のナノスケールの反応をリアルタイム観察する新手法開発

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米ブルックヘブン国立研究所らのチームが、リチウムイオン電池電極での反応をナノスケールでリアルタイム観察する新手法を開発した。電気化学セルと透過電子顕微鏡(TEM)を組み合わせた装置を用いるという。リチウムイオン電池の反応メカニズムを詳細に解明することによって、電池の高容量化と長寿命化をめざす。2012年11月13日付けの Nature Communications に論文が掲載されている。

Li+イオンがフッ化鉄ナノ粒子の表面から内部に広がっていく経路を模擬的に表した図(Sourse: BNL)

TEM内部で電気化学セルを動作させ、リチウムイオン電池の充放電サイクルに伴う化学変化をリアルタイムで追いかけることができるようにした。装置は市販の部品で構成されており、実装も簡単であるため、様々な種類の高エネルギー電極の研究での利用が期待できるとする。BNLが準備中の放射光施設 National Synchrotron Light Source II のX線ナノプローブにこの手法を適用し、電気化学セル法をさらに進化させる計画もあるという。

今回の研究では、同装置を用いて、フッ化鉄(FeF2)ナノ粒子上に広がったリチウムイオンの反応プロセスの観察を行った。観察像とコンピュータによる計算から、リチウムの変換反応プロセスが最初にフッ化鉄ナノ粒子の表面全体に秒オーダーの速さで広がり、その後に粒子層間を伝わってバルク内部へとゆっくり進んでいくことが解明されたという。

フッ化鉄ナノ粒子におけるリチウム変換のリアルタイム観察(Feng Wang et al., Nature Communications (2012) doi:10.1038/ncomms2185)

左の図(a)は、TEMによるその場観察に用いられる電気化学セルの概略図。(b)は、リチウムと反応するフッ化鉄ナノ粒子集合体のTEM像を時系列で並べたもの。領域(I )ではすぐに反応が始まるが、領域(II )と(III )では反応の遅れや欠如が見られる。スケールバーは10nm。(c)は、フッ化鉄ナノ粒子1個の形態変化を捉えた像。サブナノスケールの超微細な鉄粒子が表面で急速に形成され、続いてフッ化鉄粒子ドメインの内部に1~3nmのやや大きな鉄粒子が徐々に形成されていく様子が示されている。矢印のポイントが個別の鉄粒子。スケールバーは10nm。(d)は、フッ化鉄粒子単体から変換された鉄粒子の格子像。スケールバーは2nm。高速フーリエ変換(FFT)パターンから、[-1, 1, 1] 領域に沿って配列していることが分かる(右上の囲み画像)。グラフは、鉄の格子中における表面付近(写真の赤い円の領域)および中心部(青い円の領域)のFFTパターンの強度プロファイル。

ナノ粒子上でのリチウムイオンの変換反応については、近年活発に研究が行われるようになっている。今回の成果も、電子エネルギー損失分光法(EELS)を用いたグラファイト電極におけるリチウムの化学状態分布の研究(ACS Nano 掲載論文)や、リチウムとの反応で形成される電子輸送経路によって高容量変換電極にもたらされる優れた再充電性能をEELSで明らかにした研究(JACS掲載論文)などの先行研究に基づいているという。

「この変換反応の背後にある真のメカニズムにはまだ多くの謎が残っているが、それでもリチウムイオン電池における電子とリチウムの輸送に関して、かなり詳細な理解が得られるようになってきている」とBNLの物理学者 Jason Graetz 氏。「今後は充電反応に注目した研究を進め、長期使用による電極の経時劣化メカニズムについての新たな知見を得ることで、次世代の長寿命電池の実現をめざす」と話す。


発表資料

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