JAMSTECら、CNT利用した深海機器用の表面処理剤を開発

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海洋研究開発機構(JAMSTEC)、竹中製作所とGSIクレオスが、深海機器への応用に向けて、カーボンナノチューブ(CNT)を用いた高機能表面処理技術の開発を行った。高分子樹脂にCNTを添加して防錆性・防食性・耐衝撃性を付加。これを母材にコーティングした後で熱処理を施すことで、高い密着性を持たせることに成功した。母材の材質によらず水深4000mの高圧環境下で使用可能であるという。この表面処理を無人潜水機「おとひめ」のライト用耐圧容器に施し、実海域での検証を行って有用性を確認した。2012年11月28日から長野県長野市で開催される炭素材料学会で、11月30日に成果発表が行われる。

容器を搭載した無人潜水機「おとひめ」。2012年10月に相模湾で行われた実海域試験で使用(出所:JAMSTEC)

表面処理剤を施したアルミニウム合金製ライト耐圧容器。表面の黒色が開発した表面処理剤(出所:JAMSTEC)

海洋調査において、観測用カメラや温度計・電子機器などを保持する耐圧容器には、コスト・重量などの制約からアルミニウム系材料が使用されている。材料表面には、多孔質の陽極酸化皮膜にフッ素樹脂を含浸させて平滑性、耐摩耗性および防食性を高める処理が施される。しかし、材料の種類によっては柔軟性が弱いため深海での繰り返し使用による膨張収縮から表面処理を施した部分に亀裂・剥離が生じたり、耐衝撃性が弱いためメンテナンス時に衝撃で損傷するなどの問題があった。

表面処理剤を塗装し90日間の海水浸漬試験を実施した後の試験片。左:新規表面処理剤。腐食していない。右:従来の表面処理剤。腐食している(出所:JAMSTEC)

JAMSTECの開発チームは、高圧水槽での模擬実験などの結果から、表面処理剤の柔軟性と母材との密着性が、ある圧力を超えると失われることを見出した。この発見を基に、開発途上にあった無人潜水機「おとひめ」の要求性能を満たす表面処理剤およびコーティング技術の開発に着手。高分子樹脂にCNTを添加した表面処理剤の柔軟性に着目し、これを基本素材として高機能化を図った。

圧力を変化させながらCNTの添加比率・形状を変化させることによって、任意の圧力環境に適応できる表面処理剤の開発に成功した。さらに、実験を含む化学的・物理的検討から、表面処理剤を母材と強固に密着させるには熱処理が最適であることを見出した。

新規表面処理剤のレーダーチャート(出所:JAMSTEC)

塗装の密着性を良くするために母材表面に下地処理を行った後に、表面処理剤をスプレー塗装し、熱処理により硬化させる。作業時に耐圧容器が工具で殴打された場合にも剥離しない耐衝撃性、深海の高圧力下でも母材の収縮に追従し剥離しない柔軟性、塩水噴霧試験3000時間以上(重防食地域で50年以上に相当)の防食性が得られるという。

今後は、表面処理剤を深海10000mの圧力環境下でも使用できるようさらに改良し、耐圧性能・防食性能の評価試験を行う予定であるとする。同処理剤によりA7075アルミニウム合金(超々ジュラルミン)の深海用機器への使用を拡大し、機体の軽量化をめざす。また、母材への塗布タイプであるため下地金属を選ばず、アルミニウム合金以外にもステンレスやクロムモリブデン鋼への応用が期待できる。さらに、海洋構築物などへの広範な応用や、沿岸地域のプラント用部材の防錆処理剤としての応用もめざすとしている。


発表資料

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