Caltechら、銅/鉄ナノピラーのヘリウム脆性抑制効果を報告。放射性損傷に強い原子炉材料へ応用期待

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カリフォルニア工科大学(Caltech)を中心とする米研究チームが、ナノ材料の放射性損傷についてこれまで知られていなかった現象を報告している。銅/鉄界面を有するナノピラーでは、放射線照射によって材料内部にヘリウムの泡が発生しても、バルク材料のようなヘリウム脆性が起こらないという。将来的には、放射性損傷に強い原子炉材料に応用できる可能性がある。2012年10月12日付け Advanced Functional Materials および 11月12日付け Small に関連論文が掲載されている。

ヘリウムを埋め込んだ銅/鉄ナノピラーのSEM像。矢印部分に銅と鉄の界面がある(Credit: Peri Landau et al./Caltech)

研究チームは今回、電子線リソグラフィと電気めっきを用いて、直径100nm、長さ700nmの銅/鉄ナノピラー(下半分が銅で上半分が鉄)を形成。このナノピラーに200keVのエネルギーで放射線を照射し、銅/鉄界面領域に1cm2あたり1014個の密度でヘリウムイオンを埋め込んだ。透過電子顕微鏡(TEM)で観察した界面は平面ではなく、1~2nm径の微細なヘリウム泡が5nm程度の間隔で含有されていた。

ヘリウムは固体材料にほとんど溶けないため、バルク材料の場合、内部で発生したヘリウムガス同士が癒着して多孔質化することで材料を脆化させることが知られている。そこで、ナノピラーの機械強度特性に対するヘリウム泡の影響を調べるため、同大 W. M. Keck 工学研究所の地階に設置されている SEMentor という装置を使ってピラーの圧縮応力と引張応力の測定実験を行った。

実験の結果、銅/鉄ナノピラーではヘリウム添加によって60%超の材料硬度の増加がみられた。こうした硬度増加はバルク材料でも起こるとされるが、今回のナノピラーでは硬度増加に伴うヘリウム脆性が観察されず、引張応力に対して金属的な展性が維持されたという。

論文では、ヘリウム脆性が起こらない理由として、ヘリウム泡のサイズが小さいため材料破壊に至るほどの応力集中が起こらないこと、負荷方向に対して斜めに位置する界面が垂直応力とせん断応力を同時に生じさせることなどを挙げている。ピラーの軸方向に沿った引張負荷によって、界面領域では垂直応力が分離されやすくなり、斜面領域ではせん断応力が可塑的な変形の担い手になっていると考えられる。今後は、高温条件下で、より大きなヘリウム泡を発生させた場合のナノピラーの特性変化などを検証していくという。

また、研究チームは、比較のために行った界面を持たない銅ナノピラーについても、放射線照射に起因する材料硬化が見られたと報告している。これは、銅ナノピラーにプロトン照射を行った他のグループの先行研究とは異なる結果である。プロトンの場合、照射の有無で材料強度に変化はなかったと報告されている。研究チームの材料科学・力学助教 Julia R. Greer 氏は「材料への影響はすべて同じというわけではないようなので、異なる種類の放射性欠陥についてナノスケールで評価を行う必要がある」とコメントしている。


発表資料

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