ジョージア工科大、グラフェンナノリボンへのバンドギャップ付与技術を開発

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ジョージア工科大学の研究チームが、室温条件で二層グラフェンにバンドギャップを与える新技術を開発したとのこと。シリコンカーバイド(SiC)の基板上にグラフェンを成膜する際に、SiC基板にナノスケールの段差を設けることで、電子デバイスの動作に必要なレベルのバンドギャップを付与することができるという。2012年11月18日付の Nature Physics に論文が掲載されている。

SiCトレンチ上に形成したグラフェンの測定方法(Source: Georgia Tech)

SiC基板に段差を設けることにより、グラフェンナノリボンに1.4nmの湾曲した区間を形成したところ、この区間で0.5eV程度のバンドギャップが測定された。研究チームの物理学教授 Edward Conrad 氏は、今回の技術によって、グラフェンを用いた高速トランジスタの実現性が高まったと指摘。また、同技術では規模拡張性のあるプロセスを用いているため、トランジスタ1個の作製が可能になれば、量産への適用可能性も出てくるとしている。

SiC基板上の深さ20nm程度の段差に沿って湾曲することによって、二層グラフェンナノリボンがバンドギャップを有する半導体になるが、こうした現象が起こる仕組みについてはまだ解明されていない。研究チームは、炭素格子が曲がることで誘発される歪みが、電子の閉じ込め効果と相まって、バンドギャップの形成因子となっていると考えているという。

グラフェン成膜に用いられたSiCトレンチのAFM像。トレンチの深さは18nm(Source: Georgia Tech)

SiC基板上に溝(トレンチ)を切って段差を形成するには、電子線を用いる。高温の炉内において、段差をつけたSiC基板上に数万本のグラフェンナノリボンを成長させる。ナノリボンが成長する間に、平坦な表面を取り戻そうとするSiCの働きにより、トレンチ端の尖った部分が平滑化していく。このため、狭いSiCトレンチが溶けすぎないように、グラフェンナノリボンの成長時間を精密に制御する必要がある。また、炭素格子が「アームチェア型」になるように、リボンの成長方向を制御する必要があるという。

この技術で可能になるのは、グラフェンへのバンドギャップ付与だけではない。抵抗の誘因となる界面を伴わずに、グラフェンだけで集積回路全体を形成できる可能性もある。半導体となる区間の両側では、グラフェンナノリボンの金属的特性が維持されるからである。

「数千本のSiCトレンチを基板の任意の位置に形成することができる」と Conrad 氏。「これは単なる半導体グラフェンではなく、その両端でグラフェンと切れ目なくつながっているので、基本的にはショットキーバリア接合である」と話す。

トレンチの一方の端の下側と他方の端の上側にグラフェンを成長させることにより、理論的には2つのショットキーバリアが接続された構造を形成することができる。これは半導体デバイスの基本的構成要素である。研究チームは現在、今回の発見に基づくトランジスタの作製に取り組んでいるという。

バンドギャップの測定には、フランス国立科学研究センター(CNRS)のシンクロトロン実験施設に設置された角度分解光電子分光測定装置を使用。グラフェンナノリボンの配列に強力な光子ビームを照射し、放出される電子を測定した。湾曲したグラフェンが材料中にバンドギャップを生成することは理論的に予測されていたが、研究チームが実際に測定したバンドギャップは理論予想よりも大きなものだった。

将来的に研究チームがめざすのは、トランジスタの作製だけでなく、バンドギャップ生成のメカニズムとその制御法を明らかにすることであるという。SiCの段差の深さを変えてグラフェンナノリボンの曲げ角度を制御することによって、バンドギャップ特性を制御できる可能性がある。


発表資料

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