テキサス大とHGST、ブロック共重合体の自己組織化でHDD記録密度5倍増

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テキサス大学オースティン校とHGST(旧:日立グローバルストレージテクノロジーズ)が、ブロック共重合体の自己組織化現象を利用してHDDの記録密度を5倍高める技術を開発したとのこと。2012年11月9日付けの Science に論文が掲載されている。

今回開発された保護膜を施した場合と保護膜なしの場合のブロック共重合体自己組織化パターンの比較 (Photo Credit: AAAS)

HDDは、ディスク表面の磁性粒子の磁化方向を制御して0/1のデジタル信号を記録する媒体である。1ビットの信号を記録する磁区をより小さくより高密度に配置すれば、より大容量の記録メディアが作れる。ただし現在の技術では、1平方インチあたり記録容量1Tビットが高密度化の限界とされており、最新の市販品HDDの記録密度もだんだんこの値に近づいてきている。これ以上高密度化すると、磁区同士が近づきすぎることで隣接する磁区の磁場の影響を容易に受けるようになり、磁区の0/1信号が室温条件で勝手に反転してしまう。

この問題を回避しつつ、より高密度な記録媒体を可能にする方法がいくつか提案されており、ブロック共重合体の自己組織化を利用する方法もその1つである。ブロック共重合体とは、種類の異なる複数のポリマー鎖が結合した複合高分子であり、適切な条件下ではナノレベルの微細な周期的構造を自己組織化的に形成する性質がある。この性質を利用して、磁区同士の磁場干渉を防ぐ隔離壁の働きをする微細な高分子パターンを形成することにより、1Tビット/平方インチの限界を超える超高密度HDDが実現できると考えられている。

誘導自己組織化(DSA:Directed Self-Assembly)とも呼ばれるこの技術は、もともとウィスコンシン大学とマサチューセッツ工科大学の研究者が開発したもので、開発当初、HDDの記録密度を2倍程度高められると報告された。現在は、DSAによるパターン高密度化をさらに進め、かつ工業的に量産化可能な技術にすることが課題となっている。

ブロック共重合体で10nm以下の自己組織化パターンを形成する場合、相互作用パラメータ(X)を高くしなければならない。しかし高いXの値は、異なる界面エネルギーを持つブロックに起因することが多く、このことは薄膜ドメイン配向性の形成を難しくしている。研究チームは今回、界面に働く力を緩和するために、無水マレイン酸およびその他2つの要素で構成される高分子を保護膜として設計。これを塩基性水溶液のスピンコートで塗布できるようにした。

高分子保護膜をスピンコートした試料に熱処理を加えたところ、無水物による極性の再形成・切替えが起こって中性層が生成され、熱処理単独ではできなかったブロック共重合体の配列が可能になった。トップコート後の熱処理では、線幅15nmおよび9nmの垂直パターンが形成された。処理時間が30秒から1分程度と非常に短いのも、今回の技術の特徴であるという。なお、日産化学とモレキュラーインプリンツも、同研究に協力している。


発表資料

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