NRL、グラフェンを用いたスピン偏極トンネル障壁を実証。スピントロニクスの進展期待

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米海軍研究所(NRL)が、スピントロニクスデバイスへのグラフェンの応用について報告している。強磁性金属からシリコン半導体にスピン注入するときのスピン偏極トンネル障壁としてグラフェンが有望であることを実証したという。2012年9月30日付の Nature Nanotechnology に論文が掲載されている。

(a) 単層グラフェンが強磁性金属電極とシリコン基板の間のトンネル障壁として働いている。電極1と電極3は、チタン/金のオーミックコンタクト。(b) グラフェン端部が窒化シリコンの絶縁体中に埋め込まれるように電極を設計することで、グラフェン端部の電気伝導を通してトンネル障壁のショートを防いでいる(O. M. J. van 't Erve et al., Nature Nanotechnology (2012) doi:10.1038/nnano.2012.161)

鉄やパーマロイなどの強磁性金属は、もともとスピン偏極した電子分布を持っており、上向きのスピンのほうが下向きのスピンよりも多い。このため強磁性金属は、シリコンへのスピン注入やその検出を行うための理想的な電極であるとされる。ただし、シリコンと金属の伝導度に大きな差があることから、シリコンのスピンチャネルが上下両方向とも飽和してしまい、シリコン中のスピン偏極がなくなってしまうという問題がある。これを解決するために、シリコンと強磁性金属の間にトンネル障壁を介在させるというアプローチがある。

スピン偏極トンネル障壁の材料としては、これまでAl2O3やMgOなどの酸化物障壁がよく使われている。しかし、酸化物障壁は、欠陥、捕獲電荷、相互拡散などが生じて高抵抗になるため、トンネル障壁の性能が著しく低下してしまう。

そこで、NRLの Berend Jonker 博士らは今回、トンネル障壁として単層グラフェンを用いた。グラフェンには、欠陥の影響を受けにくく、化学的に不活性かつ安定であり、厚さ制御が可能といった特性がある。このため、強磁性金属と半導体の両方と共存できる低抵抗なスピン偏極トンネル障壁に適した材料であるとする。

グラフェントンネル障壁を通したニッケル-鉄合金からシリコンへのスピン注入の概念図。赤い矢印が上向き、青い矢印が下向きのスピン(O. M. J. van 't Erve et al., Nature Nanotechnology (2012) doi:10.1038/nnano.2012.161)

研究チームはグラフェン障壁を用いて、Ni-Fe強磁性体からシリコン中へのスピン注入とその検出を室温条件で実証。同じドーピングレベルのシリコン基板上にある酸化物トンネル障壁の場合と比べて、接触抵抗・電極面積の積(contact resistance-area product)が100~1000倍低くなることを示した。

resistance-area積が低いスピン分極電極の形成は、スピンを利用したトランジスタ、ロジック、メモリなど、2端子の磁気抵抗効果に基づいた半導体スピントロニクス・デバイスの鍵となる要件である、とJonker氏は説明。今回の結果は、この要件に応える新しいルートの発見であるとする。

特定の強磁性金属/多層グラフェン構造では、バンド構造に由来するスピン・フィルタ効果が予想されている。研究チームは、この効果に起因する、より高いトンネルスピン偏極の値が実現する可能性があると示唆。高いトンネルスピン偏極が得られれば、より高い信号対雑音比(SN比)が実現でき、デバイス動作速度の高速化や半導体スピントロニクス技術の応用進展に期待がもてるとしている。


発表資料

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