「過剰なスマートグリッドは逆効果。電力需給バランス崩れ、最悪停電も」 MITが研究報告

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米国の一部地域では数年前からスマートメーターによる需要レスポンスが導入されています。電気の利用者は刻々と変動する電気料金の情報をインターネット経由で知ることができ、料金が高い時には電気の使用を抑える行動を取るため、電力の需給バランス調整機能が働くとされています。しかし、MITの最近の研究によると、過剰な需要レスポンスには需給バランスを乱す効果があり、ある一つの価格変動の境い目で多数の利用者が一斉に反応すると、最悪の場合には停電も起こり得るといいます。

米国東海岸から中西部にかけての電力料金を色で表した図。料金が高いほうが赤、低い方が青。5分刻みで電力市場が激しく変動していることが分かる (Image courtesy of Mardavij Roozbehani)

この研究を行っているMardavij Roozbehani氏、Sanjoy Mitter氏、Munther Dahleh氏らのグループは、スマートメーターを介して、電気の利用者が価格変動に敏感に反応するようになると、正常な範囲内での価格変動が、電力システムを不安定にさせる危険なレベルの需要変動を引き起こす可能があることを明らかにしました。「電力システムが機能するためには全ての時間でほぼ完全な需要と供給のマッチングが行われなければなりません。しかし、発電所には立ち上がりの限界があって、急に出力を上げたり下げたりすることができないため、激しい需要変動が起こると供給が需要に追随できなくなります。これは誰にとっても良くないことです」とRoozbehani氏は指摘します。一方、電気料金に対する利用者の反応が、システムに著しい影響のない程度に収まるとすれば、そもそも需要レスポンスを導入する意味がない、ということになります。

研究グループが構築したモデルは、市場の変動性から利用者を部分的に遮蔽することによって需給バランスの不安定性を緩和できることも示しています。例えば、電気料金の更新を5分間隔から1時間おきに減らすというように利用者に情報を与える頻度を減らす。あるいは電力卸売市場で2倍の価格変動があった場合に小売価格も2倍変動させるのではなく、変動幅を小さく抑えるという方法があります。こうすることで、市場全体の動きを反映させつつ、過剰な需要変動を避けることができると考えられます。

ただし、ここには、リスクを最小化することで需要レスポンスの効果そのものも薄れてしまうというトレードオフの関係があります。

トレードオフを改善する一つの方法としてRoozbehani氏が説明するのは、異なった時間における異なった価格に対して利用者がどのように反応するかという情報を、利用者が電力会社に与えるというものです。こうすることで、電力会社は利用者に提示する電気料金をより細かく調整できるようになり、市場変動への応答性を最大化しつつ不安定性に関するリスクが最小化されるといいます。こうした情報をまとめるのは困難ではあるものの、それによる利益はコストを上回るのではないか、というのがRoozbehani氏の予想です。

ニューイングランド州の6地区における電力網の監視機関で上級ディレクターを務めるEugene Litvinov氏は、「私が知る限り、制御理論の知識に基づいて電力市場のダイナミクスを分析している人はほとんどいません」と言います。「こうした研究はもっと進めるべきでしょう。例えば、規制当局や政府は2020年までに風力発電の普及率を30%に引き上げたいとしていますが、電力網に対して深刻な問題を引き起こす可能性があります。この種の分析を行わなければ、電力事業者は非常に不安定な状態におかれることになるでしょう」

Litvinov氏はさらに、エネルギー消費のダイナミクスに関する精確なモデルは、価格変動に対する利用者の反応だけではなく、利用者相互の反応までも考慮に入れる必要があると指摘しています。「これは一種のゲームです。私たちは、より洗練された戦略を採る必要が出てくるでしょう。市場全体のダイナミクスは、それ自体が研究の対象です」

Roozbehani氏もこの見解に同意し、「自分たちが検証しようとしているのは、まさにそのことだ」としています。

原文 http://bit.ly/pVOjsi
訳 SJN

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「「過剰なスマートグリッドは逆効果。電力需給バランス崩れ、最悪停電も」 MITが研究報告」への3件のフィードバック

  1. 「異なった時間における異なった価格に対して利用者がどのように反応するかという電力情報を、あえて利用者に与えるというものです」という訳文ですが、原文は「for customers to actually give utilities information about how they would respond to different prices at different times」ですので、利用者が自分たちの反応の情報を電力会社に与える、ということだと思います。

  2. あと、「2倍の需要変動があった場合に価格も2倍変動するのではなく、変動幅を抑える」ですが、原文では卸売市場の価格変動を小売市場にどのように伝えるか、という話をしているので、この訳文では意味が違ってきてしまっています。

  3. >>1
    ご指摘ありがとうございます。修正しました。

    >>2
    こちらもありがとうございます。「電力卸売市場で2倍の価格変動があった場合に小売価格も2倍変動させるのではなく、変動幅を小さく抑える」と修正しました。

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