耳の中の生体電位を医療用デバイス電源に利用 ・・・ MITとハーバード大が実証

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マサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学の研究チームが、内耳における蝸牛の生体電位を電源として利用するインプラント型医療用デバイスを開発したとのこと。モルモットの内耳にデバイスを埋め込み、無線による計測データの読み出し実験に成功した。聴力や平衡感覚の計測などに応用できるとする。2012年11月8日付の Nature Biotechnology に論文が掲載されている。

今回開発されたチップの拡大写真。無線送信器を備え、電源にはモルモットの耳の中の生体電位を利用する (Image: Patrick P. Mercier)

内耳の構造。図の右側が蝸牛 (出所:Wikipedia)

耳の内部では、鼓膜の振動が電気信号に変換され、脳に送られる。蝸牛は、この電気信号を流すための電圧を作る働きを持っている。蝸牛内には膜で仕切られた空間が存在し、細胞の一部がイオンポンプとして機能している。イオンポンプによって膜の両側におけるカリウムイオンとナトリウムイオンの濃度が不均衡となり、膜の内外に電位差(膜電位)が生じる。

蝸牛内の電圧は生体の中では最も高いものだが、それでもなお非常に低い。その上、聴力を損なわないようにする必要から、デバイスの電源として利用できる電力はごく一部に限られる。今回MITのマイクロシステム技術研究所(MTL)が開発したチップは、こうした条件で動作可能な超低電力電波送信器であるという。

MTLのチップには電力変換回路も内蔵されており、キャパシタ内に電荷を段階的にためていく仕組みとなっている。このため、生体電池の微弱な電圧であっても、デバイスを駆動させることができる。生体電池の電圧は変動を伴うが、無線を駆動するために必要な電荷は40秒から4分程度の時間でたまる。無線信号の周波数がそのまま内耳の電気化学特性の指標になるという。

実験では、このチップに接続した電極をモルモットの蝸牛内の膜に埋め込んだ。蝸牛内電位から最小で1.12nWの電力を5時間にわたって回収し、蝸牛内電位の測定値を2.4GHz無線によって40~360秒間隔で転送することができた。チップ自体はモルモットの体外に置いたが、チップサイズは内耳の空間内にも十分設置できる小ささであるという。


発表資料

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