ライス大、多孔質シリコン粉末を用いた高容量リチウムイオン電池負極を開発

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ライス大学の研究チームが、多孔質シリコンの粉末を用いた高容量のリチウムイオン電池負極を開発したとのこと。負極容量1000mAh/gで600回の充放電サイクルを実現し、現行のグラファイト負極の容量350mAh/gから大幅な性能向上がみられる。Scientific Reports に論文が掲載される。

バインダとしてPANを混ぜた多孔質シリコン粉末の電子顕微鏡画像 (Credit: Madhuri Thakur/Rice University)

シリコンはグラファイトの10倍のリチウムイオンを吸蔵できるため、高容量リチウムイオン電池の負極材として有望視されているが、完全にリチオ化したときに体積が元の3倍超も膨張するという問題がある。充放電を繰り返すと、膨張収縮によってシリコンが急激に壊れてしまう。

シリコンの体積膨張に対応する方法として、シリコンをナノ構造化して比表面積を増やす方法が検討されている。ライス大でも、シリコンナノワイヤを利用した負極の開発が行われている(既報)。一方、今回の研究チームは、これとは違うアプローチを取っている。シリコンウェハーをエッチングして多孔質化し、スポンジ状のシリコン膜を作製するという手法である。

この手法の問題点は、材料のハンドリングが簡単ではなく、商用生産に向けたスケールアップが難しいということだった。そこで、研究チームの Madhuri Thakur 氏は、電池の商用生産プロセスに適合させる試みとして多孔質シリコンウェハーを粉末状に砕いてみた。

多孔質シリコン粉末を使用したハーフセル (Credit: Jeff Fitlow/Rice University)

多孔質シリコン粉末を使用したハーフセル (Credit: Jeff Fitlow/Rice University)

多孔質シリコンの粉末は、1gあたりの表面積が46m2となった。通常のシリコンの粉末では同0.71m2なので、今回の材料は従来比50倍超の表面積を得られることになる。「表面積を大きくすることで、膨張を吸収するための隙間をたくさん持たせることができる」とチームリーダーの化学・生物分子工学助教 Sibani Lisa Biswal 氏は話す。多孔質シリコン粉末には、バインダとして、導電助剤と構造支持体の機能を持つ熱分解性ポリアクリロニトリル(PAN)を混ぜる。

「材料を粉末状にすることで、ロール・ツー・ロール方式の大量生産にも使用できるようになる」と Thakur 氏は言う。同材料は、合成方法も簡単で、コスト効率がよく、充放電サイクルを重ねても高容量が維持できるとする。この技術では、シリコン内部の空孔サイズとシリコン粒子の粒径を制御することが重要であることが分かっているという。

最近の実験では、金属リチウムを対向極に用いたハーフセルの電池を設計し、負極容量1000mAh/gを実現した。この値はシリコン負極の理論容量の1/3程度に過ぎないが、それでも既存の電池よりは3倍高い。2Cレートでの充放電では600サイクルにわたって負極性能が維持された。5Cレートで充放電させた別の負極では、700サイクル超の動作後も容量1000mAh/gを維持できるとみられている。次の研究課題は、この多孔質シリコン粉末を負極に使った完全な電池を作製すること。正極に酸化コバルトを使用した予備実験では良好な結果を得ており、他にも調べてみたい新規正極材料がいくつかあるという。


発表資料

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