名古屋大ら、太陽フレアの発生条件とメカニズム解明。正確な宇宙天気予報に期待

このエントリーをはてなブックマークに追加
Share on Facebook

名古屋大学太陽地球環境研究所の草野完也教授(太陽地球環境物理学)を中心とする研究チームが、「地球シミ
ュレータ」による詳細な計算機シミュレーションと太陽観測衛星「ひので」による観測データの精密解析を通して、太陽フレアが発生する条件とメカニズムを明らかにした。太陽表面に2種類の特殊な磁場構造が現れるときに太陽フレアが発生するという。

計算機シミュレーションで使われた太陽コロナ磁場のモデル。θ0 の捻じれ角(シア角)を持つ大規模磁場中に、回転角φeの小規模磁場変動を与える。底面は太陽表面に対応し、白と灰色の領域は磁場の向きが外向きと内向きの領域に対応する (出所:名古屋大学)

 
巨大フレアの発生条件解明と正確な宇宙天気予報の実現につながる研究として注目される。2012年11月20日付の米国天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に論文が掲載される予定。

太陽フレアは太陽黒点の近傍で発生する巨大な爆発現象であり、その影響は地球上の様々なインフラや宇宙飛行士・航空機乗員乗客の健康被害にも及ぶことが指摘されている。1989年には巨大なフレアが引き起こした磁気嵐によって、カナダ・ケベック州で大規模な停電が発生し、600万人が被害を受けた。また、1859年には太陽フレアに伴うさらに大きな磁気嵐が起きたことが記録に残されており、現代において同規模の現象が起きた場合、その被害総額は2兆ドルを超えると試算されている。

太陽フレアは黒点周辺に蓄積された磁場のエネルギーの一部が太陽コロナプラズマのエネルギーとして突発的に解放される現象であると考えられているが、その発生機構は未だに明確に解明されていない。いつ、どこで、どの程度のフレアが発生するかを正確に予測することは困難とされてきた。

計算機シミュレーションのまとめ。大規模磁場のシア角(θ0)と小規模磁場の回転角(φe)からなるパラメタ領域においてフレアが発生するか否かを表す。ピンクのダイアモンドおよび青のダイアモンドは、それぞれ対応するパラメタ(反極性型および逆シア型磁場)でフレアが発生したことを示す。一方、四角(□)のパラメタではフレアは発生しなかった。等高線(緑から赤)はフレアで解放されたエネルギーを示し、シア角が大きな場合にのみ大規模フレアが発生することが分かる (出所:名古屋大学)

 
名古屋大らの研究チームは今回、太陽フレアが太陽表面における「大規模な磁場の捻じれ」と「小規模な磁場の変化」の相互作用を通して発生するという仮説に基づき、太陽表面磁場とフレア発生の関係を詳細な計算機シミュレーションによって調べた。地球シミュレータを用いて100通り以上の異なる磁場構造に関してそれぞれフレア発生の有無を調べる数値実験(電磁流体力学シミュレーション)を行った結果、捻じれた磁場中に「反極性(OP)型」または「逆シア(RS)型」と呼ばれる2種類の特殊な構造を持つ小規模な磁場が存在したときにフレアが発生することを見出した。さらに、大規模な磁場の捻じれが強いほど、発生するフレアの規模が大きくなることも明らかにした。

シミュレーションによる予測を検証するため、2006年12月13日および2011年2月13日に発生した大規模フレアについて、太陽観測衛星「ひので」が観測したデータに基づいて詳細に解析した。その結果、シミュレーションが予測した2種類の磁場構造がそれぞれ太陽表面に現れた数時間後に、これら2つのフレアがその領域で発生したことを確認した。また、過去に観測された複数のフレアもシミュレーションの予測に一致する磁場構造を伴っていたことを突き止めた。

計算機シミュレーション(反極性型)で再現された太陽フレアにおける磁力線(緑線)の時間変化。赤色の面は強い電流層を示す (出所:名古屋大学)

 

2006年12月13日に発生したXクラスフレアの「ひので」衛星による観測結果。グレースケールは太陽表面磁場を、赤線はカルシウム線の発光を示す。黄色の円形で示した部分に反極性(OP)型磁場構造が現れた後に、その領域を中心としてフレアによる発光が広がる様子が示されている。緑線は磁気中性線 (出所:名古屋大学)

 
今回の成果は、太陽磁場観測を通してフレア発生が数時間前には予測可能であることを意味するもの。研究チームはこの成果を応用し、精密な太陽磁場観測データよりフレア発生を事前に予測するスキームの研究開発に着手しているという。


PDF形式の発表資料

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...