NIST、AFM用の光学機械センサ開発。生体から固体まで幅広い試料を高感度測定

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米国立標準技術研究所(NIST)が、原子間力顕微鏡(AFM)用の光学機械センサを開発している。AFMの感度を損なわずにカンチレバーのバネ定数を変えられるため、低バネ定数による生体試料の観察から高バネ定数での固体試料の高分解能測定まで、幅広い用途に高感度AFMが適用できようになるという。2012年7月25日付の Optics Express に論文が掲載されている。

(a)デバイスの動作原理。カンチレバーのカラーバーは有限要素法でシミュレーションした変形量、円盤部のカラーバーは同じくシミュレーションによる電界の振幅。円盤の直径は2.5μm、カンチレバーは幅125nm・厚さ260nmとした。(b)は(a)と同じスペックのデバイスのSEM画像。(c)はデバイス特性の測定方法の概略 (Yuxiang Liu et al., Optics Express (2012) doi:10.1364/OE.20.018268)

通常、AFMでは、試料表面をなぞったときのカンチレバーの動きを光学的に測定することによって撮像を行うが、これが顕微鏡の感度・安定性・精度を制約する要因となっている。また、光の波長より短い微小なカンチレバーを使うことも不可能となる。これらの問題を解決するため、NISTの研究グループは昨年、機械式ナノカンチレバー探針と高感度のナノフォトニック干渉計を1個のシリコンチップ上に集積した光学機械式センサを開発した(Nano Letters の掲載論文)。

同グループは今回、このシステムを用いて、カンチレバーの半径を変えることでカンチレバーのバネ定数を変化させたときのAFMの変位感度を調べた。その結果、バネ定数を 0.01 N/m ~ 290 N/m と4桁の範囲で変化させても、1 fm/(Hz)1/2のオーダーの変位感度が維持できるとの結果を得たという。また、カンチレバー探針の共振周波数 200kHz~110MHzとなっており、通常のAFMよりも高いため、高速撮像とノイズ低減、感度向上が期待できるとしている。

円盤状共振器の直径を変えたときのデバイスの(a)バネ定数と(b)基本周波数 (Yuxiang Liu et al., Optics Express (2012) doi:10.1364/OE.20.018268)

 
通常、AFMの感度と安定性はともにカンチレバーのバネ定数 k に依存している。感度を上げるために k を低くすると探針先端の安定性が犠牲になるというように、2つはトレードオフの関係にあるとされる。

今回開発されたデバイスでは、半円形のカンチレバーが100nm程度の狭ギャップで円盤状の光学共振器の周りに配置されている。カンチレバーが動くと円盤端部を周回している光の屈折率が変化する。その結果、円盤における光共振モードの有効経路長が変化し、スペクトル位置が変調。光ファイバーを通して円盤状共振器に入出力するレーザー光の強度によってこの変化を読み取る。この仕組みにより、広範囲のバネ定数で感度を維持できるようになるという。

実験では、円盤の直径Dを2.5μm、10μm、50μmと変化させた。D=2.5μmのときバネ定数 k は最大290N/m、D=50μmのとき最小 0.011 N/mとなった。感度は D=10μmのとき 0.2 fm/(Hz)1/2で最も高くなった。D=50μmのときは 1.0 fm/(Hz)1/2、D=2.5μmのときは 2.0 fm/(Hz)1/2 だった。研究チームは、今後の課題として、ナノカンチレバーの静電気駆動化、光学機械センサのAFMへの内蔵、放射圧による冷却・励起などの手法をAFM測定に利用する方法の研究などを挙げている。


発表資料

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