NPLら、グラフェンの層厚を正確に測る方法を検証

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英国立物理学研究所(NPL)とリンショーピン大学の研究チームが、グラフェンの層厚を精度よく測定する方法について報告している。最も精度が高い方法は、静電気力顕微鏡(EFM: electrostatic force microscopy)の測定データを用いたヒストグラム法であるという。2012年9月6日付の Journal of Applied Physics に論文が掲載されている。

図1 単層の領域に粒子状付着物が見られるグラフェン (Tim L. Burnett et al., J. Appl. Phys. (2012) doi:10.1063/1.4748957)

図2 粒子状付着物のないグラフェン (Tim L. Burnett et al., J. Appl. Phys. (2012) doi:10.1063/1.4748957)

 
今回の研究では、大面積かつ高品質なグラフェンを得られるSiC基板上へのCVD成長法について考察した。同法によるグラフェン成膜では、高温での熱処理プロセスにおいて基板に高さ5~30nmの台地状の段差ができ、温度・雰囲気ガス・圧力などの成長条件やミスカット角によって基板表面にグラフェンの複雑な立体形状が形成される。また、SiCの熱分解が自己飽和型プロセスではないため、様々な厚さのグラフェン層が基板上に混在することになる。

このため、グラフェン層の厚さを直接測定することは非常に難しいと研究チームは指摘する。大気環境下でグラフェンの形態を調べる場合には、グラフェン表面に水や様々な付着粒子が存在することで、測定はさらに複雑になる。一般にグラフェン1層分の高さ(多層グラフェンにおける層間距離)は335pm(ピコメートル)とされているが、実際にSiC基板上にグラフェンを成膜すると、この値はグラフェンの積層のされ方によって、85~415pmの範囲でバラつくという結果が出ている。

とはいえ、電子デバイスへのグラフェン応用においては、グラフェンの層数を正確に特定する必要がある。単層グラフェンにはバンドギャップがないが、二層グラフェンにはあるというように、層数の違いがバンド構造に決定的な違いをもたらすからである。

図3 (a)は図1、(b)は図2のグラフェンの模式図。IFLは、SiC基板とグラフェンの界面層 (Tim L. Burnett et al., J. Appl. Phys. (2012) doi:10.1063/1.4748957)

 
そこで研究チームは、グラフェンの層厚を決定するためのいくつかの方法について検証した。その結果、微小な垂直方向(0.5nm未満)での測定に対しては、EFMデータを用いたヒストグラム法が最も信頼性が高く、正確かつ再現性の良い値を得られることが分ったという。また、ヒストグラムをガウス曲線にフィッティングすることで、ヒストグラムのデータ平坦化が適正かどうかのチェックも行えるとした。

図1および図2は、全面積の60%程度が単層グラフェン(1LG)、残りの大部分が二層グラフェン(2LG)で占められているサンプルのデータである。図1・2とも上段は、左からトポグラフィ像、ディフレクション像、EFMの位相画像(スケールバーは1μm)。中段と下段は、それぞれ1LGと2LGにまたがる領域Aと1LGのみの領域Bについて、トポグラフィ像、段差プロファイル、四角で囲んだ部分のトポグラフィ像から作成したヒストグラムを示している。

図3(a)は図1のデータの状態を模式的に表している。1LGの領域は厚さ400pm程度の水の層で覆われており、そこに粒子状の付着物が散在している。図3(b)は図2に対応しており、こちらは粒子状の付着物がないかわりに、水の層の一部に穴が開いたような部分がある。論文では、グラフェンの表面がこうした複雑な状態であっても、データのヒストグラムを作成することによって水の層や粒子、穴などの影響がうまく取り除かれ、実際のグラフェンの層厚・層数を精度よく特定できることが分析されている。


発表資料

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