MIT、ナノ粒子の不可視化技術によるデバイス提案

このエントリーをはてなブックマークに追加
Share on Facebook

マサチューセッツ工科大学の研究チームが、電子の流れに対してナノ粒子を不可視化する技術を使ったデバイス開発を提案している。デバイス中にナノ粒子があっても、あたかも何もないかのように電子が散乱せずに流れるようにするという。

電子の「確率の流れ」を表すダイアグラム。ナノ粒子を通過する前後で電子の経路が変化しないように粒子内での経路を曲げることで、電子に対して粒子が不可視化される (Credit: Bolin Liao et al.)

すでにシミュレーションによるモデル化を行っており、今後は実デバイスによる実証をめざす。2012年9月20日付の Physical Review Letters に論文が掲載されている。

この技術は、近年活発に研究されている物体の不可視化技術(クローキング)を電子デバイスにナノレベルで応用するものであるという。クローキングでよく使われるのは、メタマテリアルと呼ばれる特殊な材料を使って物体を覆う手法。物体に当たった光が、メタマテリアルによって曲げられて物体の背後に回りこむことで、結果として不可視化される。一方、材料中での電子の流れも、波動方程式で記述される光などの電磁波に似た動きをする。このため研究チームは、クローキングに似た手法によって、材料中のナノ粒子を電子の流れに対して不可視化できると考えた。

ナノ粒子の不可視化プロセスでは、電子が文字通りナノ粒子を通り抜ける。このとき、ナノ粒子内で電子の経路が2回曲がる。このため、ナノ粒子から出てきた電子の軌道がナノ粒子に出会う前のものと同じになり、結果的にナノ粒子が不可視化される。

コア材料および別種の殻材料で構成されるコア-シェル構造のナノ粒子をモデル化し、コンピュータでシミュレーションしたところ、このコンセプトが有効であることが分ったいう。論文によれば、電子の散乱断面積は物理的断面積の0.01%未満に抑えられ、この4桁の違いをエネルギー量で表すとわずか40meVの範囲に収まるとしている。

今後は、実デバイスの作製に挑み、デバイスが予想通りに動くかどうかを調べる。研究開始時のコンセプトは通常の半導体材料中に埋め込まれたナノ粒子を使って構築されたものだが、グラフェンなど他の材料についてもこの結果が再現されるかどうかも検証したいとしている。

この研究を始めた最初の動機は、熱電変換デバイス向け材料の最適化だったという。熱電変換デバイスでは導電性は高いほうがよいが、熱伝導性については、熱勾配を維持する必要があるため低いほうが望ましい。しかし、通常、導電性が高い材料は熱伝導性も高い傾向があり、2つの特性が反対になる材料はあまりない。シミュレーションによると、電子に対して材料を不可視化すると、熱電変換デバイスに対するこうした要求によく合致する特性が得られるという。

熱電変換デバイス以外に、この技術を用いてより高効率のフィルタやセンサを作れる可能性もある。研究チームの MIT 機械工学教授 Gang Chen 氏は、コンピュータの部品が微細化するにつれて「電子の輸送を制御する戦略を立てなければならなくなっている」と話す。そして、不可視化技術も有効なアプローチの1つであるとする。

Chen 氏によれば、今回のコンセプトが、新規の電子デバイス用スイッチにつながる可能性もある。電子に対する透明/不透明を切り替えることで、電子の流れのオン/オフ制御を行うというアイデアが提示されている。


発表資料

おすすめ記事

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...