粒子でもあり反粒子でもある「マヨラナ粒子」、米研究チームが存在の証拠つかむ

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米ノートルダム大学とパデュー大学の研究チームが、マヨラナ粒子を検出するための超伝導/半導体ハイブリッドデバイスを開発し、実際にマヨラナ粒子存在の証拠となる現象を観測したと報告している。マヨラナ粒子は、1937年にイタリアの理論物理学者エットーレ・マヨラナが存在を予想した素粒子。粒子自身がその粒子の反粒子でもあるという特異な性質を持つ(ノートルダム大学の発表資料および2012年9月23日付 Nature Physics の掲載論文)。

Xinyu Liu 氏(左)と Jacek Furdyna 氏

マヨラナ粒子は、電子などと同じくスピンが半整数の値をとるフェルミ粒子の一種だが、電子と違って電気的に中性なのが特徴。負の電荷を持つ電子には、正の電荷を持つ陽電子が反粒子として存在するが、マヨラナ粒子の場合は電気的に中性であるため、粒子自身がその粒子の反粒子でもあることになる。予想が立てられてから80年近く経った今も、素粒子としては発見されていないマヨラナ粒子だが、最近になって、トポロジカル超伝導と呼ばれる特殊な超伝導状態での準粒子の励起がマヨラナ粒子として振舞うことがあると指摘されるようになってきた。マヨラナ粒子は外界の影響を受けにくく安定しているため、量子計算への応用も有望視されており、量子コンピュータ実現という観点からも注目を集めている。

図1 デバイスの構成(Leonid P. Rokhinson, Xinyu Liu, Jacek K. Furdynaar(2012) arXiv:1204.4212v2)

 
今回、ノートルダム大の物理学者 Jacek Furdyna 氏と Xinyu Liu 氏、パデュー大の物理学者 Leonid Rokhinson 氏はアンチモン化インジウム(InSb)の化合物半導体ナノワイヤとニオブ(Nb)系超伝導体で構成される1次元のハイブリッドシステムを共同設計し、マヨラナ粒子存在の証拠を検出しようと試みた。デバイスの構成を図1に示す。写真(a)の赤い楕円で囲まれた部分は、直流超伝導量子干渉素子(dc SQUID)である。その横の拡大画像はジョセフソン接合1個のAFM像で、明るく見えるのがNbの領域となる。Nbの周囲にある明るい茶色の輪郭は厚さ2~3nmの薄膜Nb層である。スピン軌道相互作用による磁場Bsoの方向は緑色の矢印で表されている。(b)はデバイスの概略図。低温では薄膜Nb層が伝導性を持たないため、超伝導電流はInSbにおける近接誘導超伝導によって流れるようになる。InSbナノワイヤ内部にあるマヨラナ粒子の予想位置がオレンジの点で示されている。(c)は、磁場Bsoに対して垂直な磁場Bが存在するとき、スピン軌道相互作用を伴う材料中でのエネルギー分散をグラフ化して表している。

外部磁場のない状態で周波数f0の高周波がこのデバイスのInSb/Nb接合部に照射されると、とびとびの値に量子化された電圧ステップ(シャピロステップ)が現れる。そのステップの高さΔVは、プランク定数hを用いて ΔV=hf0/2e となることが観察されている。これは通常の超伝導体において電荷 2e のクーパー対が超伝導電流の担い手となることから予想される通りである。ここでジョセフソン接合に強い外部磁場をかけると、最初のシャピロステップが元の2倍の高さ ΔV=hf0/e となる。この現象は、電荷 e の準粒子が超伝導電流の担い手となっていることを示唆しており、マヨラナ粒子に特有な存在根拠になるという。

図2 交流ジョセフソン効果とシャピロステップ(Leonid P. Rokhinson, Xinyu Liu, Jacek K. Furdynaar(2012) arXiv:1204.4212v2)

 
図2は、実際にギャップ40nmのジョセフソン接合に周波数3GHzの高周波を照射して交流ジョセフソン効果とシャピロステップを測定したデータである。高周波電圧の振幅Vrfを3~6mVの範囲で0.6mVずつ増やしていくと、外部磁場Bの強さが2T未満のときには高さ6μVのシャピロステップが明瞭に観測される。一方、Bが2Tを超えると6μVのプラトーは消失し(ピンクの破線で囲まれた部分)、最初のシャピロステップはその2倍の12μVの高さで観測されているのが分る。

このように超伝導デバイスを利用してマヨラナ粒子の検出を行う研究は、他の研究グループの間でも近年活発に行われるようになっている。2012年5月には、オランダのデルフト工科大学らの研究チームも、InSbナノワイヤの一端を通常の金電極に接触、反対の端をNbTiN超伝導体電極に接触させたデバイスを作製し、マヨラナ粒子の存在根拠を観測したと報告した(デルフト工科大の発表資料および Science の掲載論文)。同年9月には、物質・材料研究機構(NIMS)も、理論計算上ではあるがマヨラナ粒子の搬送・交換操作が可能なナノ量子デバイスを設計している(NIMSの発表資料および Europhysics Letters の掲載論文)。

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