MIT、動作中のリチウム空気電池の化学反応をその場観察

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マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、充放電動作中のリチウム空気電池の中で起こっている化学反応をその場で直接観察することに成功した。大気圧X線光電子分光法(APXPS: ambient pressure X-ray photoelectron spectroscopy)を使用した。リチウムと酸素の反応メカニズムの解明が進むことで、高容量リチウム空気電池の実用化に近づくと期待される。2012年10月8日付の Scientific Reports に論文が掲載されている。

放射光施設ALSの試験用チャンバ。オレンジ色にハイライトされた部分がリチウム空気電池(Credit: Eva Mutoro and Ethan Crumlin, ALS)

APXPS による分析に必要な高強度のX線照射は、ローレンス・バークレー国立研究所内の放射光施設 Advanced Light Source(ALS)で行った。実験に使った全固体型リチウム空気電池は、MITとオークリッジ国立研究所が共同で開発したもので、負極にリチウムリッチなチタン酸リチウム(LLTO)、固体電解質にリン酸リチウムオキシナイトライド(LiPON)、正極に五酸化バナジウム(V2O5)が使用されている。LLTO負極(化学式は Li4+xTi5O12)は750nm厚とし、白金被覆したアルミナ円板上に設置。LiPON電解質は1000nm厚、V2O5正極は23nm厚とした。

APXPS測定に使われた全固体リチウム空気電池の構造図(Yi-Chun Lu et al., Scientific Reports (2012) doi:10.1038/srep00715)

 
実験では、セル表面から観測されるLixV2O5およびLiPONのX線光電子分光(XPS)が外部電圧印加に応じて変化する様子を捉えた。酸素分圧 5×10-4 気圧(atm)の条件でリチウム空気電池を動作させると、放電時にはリチウムの1s ピークが増大し、バナジウムの2p ピークに著しい減少が見られた。充電時には逆にリチウムの1s ピークが減少し、バナジウムの2p ピークに著しい増大が見られた。このデータは、酸素分圧 5×10-4 気圧におけるリチウム空気電池の放電時に五酸化バナジウム正極表面でリチウムイオンと還元された酸素が結合してリチウム酸化物 Li2O2が生成されることを示唆している。この生成物は、再充電時に分解されると考えられる。一方、超高真空中でリチウム空気電池を充放電した場合のXPSデータでは、リチウムイオンが五酸化バナジウム正極を可逆的に出入りしていることが示された。

研究チームは、今回開発したその場観察の手法がリチウム空気電池に限らず、電気化学的なエネルギー貯蔵における反応メカニズムの研究に広く適用できるとしている。

APXPSで測定したリチウム空気電池充放電時のリチウム、酸素、バナジウムのスペクトルデータ(Yi-Chun Lu et al., Scientific Reports (2012) doi:10.1038/srep00715)

 

リチウム空気電池の反応メカニズムの概念図。(a)超高真空条件、(b)酸素分圧 5×10-4atm で充放電 (Yi-Chun Lu et al., Scientific Reports (2012) doi:10.1038/srep00715)

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