NIMとテルアビブ大、光合成タンパク質の光電流を近接場光顕微鏡で測定

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ナノシステム・イニシアチブ・ミュンヘン(NIM)とテルアビブ大学の研究チームが、光合成タンパク質単体から生成される光電流の測定技術を開発したとのこと。単分子レベルで光合成タンパク質を制御・測定できるようにすることで、光電変換や光電気化学分野でのデバイス応用が進むと期待される。2012年9月30日付の Nature Nanotechnology に論文が掲載されている。

光化学系 I 単体の光電流測定方法 (Daniel Gerster et al., Nature Nanotechnology (2012) doi:10.1038/nnano.2012.165)

光合成タンパク質(光化学系 I )単体から生成される光電流を、近接場光顕微鏡(SNOM)を利用して測定する方法を開発した。電極の役割を持つ金表面に光化学系 I の片側を固定し、金被覆したガラス片(SNOM探針)に反対側を接触させた。ガラス片が対向電極および光源として機能し、タンパク質の接合部から10pA程度の光電流が記録された。

SNOM探針は、肉眼で視認できる四面体のガラス片と、原子サイズの先端部から構成されている。ガラス片は金薄膜でコーティングされており、基板とSNOM探針との間の距離は、高分解能の圧電素子によって制御される。探針先端には裏面から波長633nmのレーザー光(出力4mW程度)が照射され、入射光による探針先端の局所的励起と光化学系 I の結合が高効率で実現されるという。

今回の研究では、システイン変異体を用いて光化学系 I を基板とSNOM探針先端に共有結合させた。光化学系 I の光励起がトリガーとなって一連の酸化還元反応が起こり、反応中心の電子伝達系に沿って電子が移動する。このとき、内部量子効率は1に近い値となる。実験に用いた光化学系 I の双極性変異体では、光化学系 I の酸化反応側と還元反応側の両方に変異が見られ、システイン変異体によって表面での光化学系 I の自己組織化的な配向が促進される。また、光化学系 I と電極との電子的な結合も促進される。対照群として、光化学系 I の単極性変異体も利用した。単極性変異体では、2つのシステイン変異体が酸化反応側だけに存在し、還元反応側には電子の経路となるシステイン変異体が存在しない。

右上の図は、光化学系 I 単体の光電流測定方法を表したもの。図a: SNOM探針に裏面からレーザーを照射して光らせ、光化学系 I の光励起で発生する光電流を測定する。図b: SiO2を膜厚20nm程度の金で被覆した探針のSEM画像。スケールバーは100nm。図c: 結晶学的データに基づく光化学系 I の構造図。ポリペプチド鎖(グレイ)の内部にクロロフィル(緑)およびカロチノイド(オレンジ)が組み込まれている。電素伝達を媒介する発色団(マゼンタ)は空間充填モデルによって表される。光化学系 I と探針および基板はシステイン変異体(矢印)を介して共有結合する。

電子伝達系の反応中心における電子の伝達時間と再結合時間 (Daniel Gerster et al., Nature Nanotechnology (2012) doi:10.1038/nnano.2012.165)

 
一般に、光化学系 I は、クロロフィル96個とカロチノイド色素分子22個が結合した12個のポリペプチドから構成されている。光化学系 I のタンパク質は、口径15nm程度、高さ9nmの円筒形をしている。クロロフィル(P700)のスペシャル・ペア(光化学系反応中心にあるニ量体クロロフィル)が光励起すると、単量体クロロフィル(Chl)に向けて電子1個が1ピコ秒程度で伝達される。励起した電子は、2つのフィロキノンを介して3つの鉄-硫黄中心に渡されて緩和する。第1の鉄クラスタFxは電子伝達系分子のすぐ外側にあり、フィロキノンからFxまでの伝達速度は二相で時定数15~150ナノ秒程度となる。電子はその後500ナノ秒未満で残る2つの鉄クラスタFA/Bに伝達される。

実験で観測された10pA程度の光電流を、光化学系 I における電極間での電子伝達速度に換算すると16ナノ秒程度となる。内部量子効率が1に近く、波長633nmでの光化学系 I 単層の吸光率が0.003であることを考えると、16ナノ秒という電子伝達時間は、光子束が少なくとも 2×1010s-1程度あることを示唆している。この値をSNOM探針先端での近接場強度に換算すると、3.5kW cm-2となり、実験条件として設定したレーザー出力によく一致した。光化学系 I で生成された光電流の電流密度は、光照射 0.1W cm-2あたり 0.15mA cm-2程度になるという。


発表資料

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