モナシュ大学とライス大学の研究チームが、グラフェンによる耐腐食コーティング技術について報告している。グラフェンの被覆によって銅の耐腐食性が100倍近く高まったという。Carbon 2012年9月号に論文が掲載されている。
通常、金属の保護膜として使われているポリマーコーティングは、削られて傷がつくことで保護性能が損なわれてしまう。グラフェンの保護膜は、ポリマーよりも損傷しにくく、金属表面に被覆しても質感や見た目が変らないという利点がある。
研究グループは、800~900℃の温度条件での化学的気相成長法(CVD)で銅表面にグラフェンを成膜し、これを塩水に浸してテストした。塩化物環境中での電気化学的特性を調べたところ、銅のインピーダンスに著しい増大が見られ、グラフェン被覆された銅の陽極および陰極での電流密度は1~2桁小さくなったという。

グラフェン被覆した場合としていない場合での銅の動電位分極の比較。グラフェン被覆した銅で、電流密度の大幅な低下が見られる (R.K. Singh Raman et al., Carbon (2012) doi:10.1016/j.carbon.2012.04.048)
金属にグラファイトを接触させた場合には金属腐食が進むことを考えると、この観察結果は直観に反するものがあると研究チームは指摘する。極薄グラフェンを用いた耐腐食コーティング技術の開発にパラダイムの変化をもたらす可能性がある。今回の研究は銅に限られているが、すでに他の材料に対しても同じ技術を適用した研究を進めているとのこと。また、商用化しやすくするために、成膜温度を下げる方法についても探索しているという。
発表資料
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日立金属が開発した新型工具鋼 S-MAGIC,は微量な有機物の表面付着により、金属では不可能といわれていた自己潤滑性能を実現した。この有機物の種類は広範囲で生物系から鉱物油に至る広い範囲で駆動するトライボケミカル反応であると。潤滑機械の設計思想を根本から変える革命というものもあるとのこと。
このトライボケミカル反応にもノーベル物理学賞で有名になったグラフェン構造になるようになる機構らしいが応用化の速度には目を見張るものがある。
今月の、「プレス技術」を読みましたが、冷間工具鋼、SLD-MAGICのトライボロジー特性は凄いですね。微量の油をぬったセミドライ状態で、摩擦させるとまるでDLCのような自己潤滑性が出るなんて。コーティング費用分コストパフォーマンスが良く、いろんな摺動部品にも使えそうだ。
このまえのNHKのクローズアップ現代で、やっとシェールガス革命の事の重要さを認識しました。それでいろいろと調べていると、なんか日立金属の自己潤滑型高性能工具鋼が掘削用のドリルの材質に使われたこともブレークスルーの一助となったとか。
ノーベル賞レベルの発明だと思う。自動車、切削・塑性加工機械、製鉄機械、発電機、鉱山機械、建設機械、鉄道車輌、船舶、金型技術などの摺動、摩擦、転動部品に革命が起こること間違いなし。
先日、その高性能工具鋼の自己潤滑性とかいう話を日本トライボロジー学会で聞いたが、モリブデンとかカーボン、それにDLCコーティングなどの怪しげな論説とも整合し、油中添加剤の極圧効果にも拡張できる話は面白かった。そのメカニズムをひらたくいえば世界初の本格的ナノマシンであるボールベアリング状の分子性結晶が表面に自己組織化されて、滑りが良くなるということらしい。
その物質って、グラファイト層間化合物っていうんでしょ?グラファイトの層間に規則正しく、別分子が挿入される自己組織化機構にものすごく興味が湧きます。
そういうことだったのか。ハイテン用のプレス金型に広がっていて、カジリはなぜ抑えられるか業界中の謎だった。このようなナノメカニズムが働いていたんですね。
地球温暖化対策まったなし。はやく活用されて、オイル交換フリー自動車なんてできないのかな?
そうですねIPCCの最新の発表でも、温暖化傾向の確実度がさらに高まったとのこと。グリーンテクノロジーを駆使して、脱石油化をさらに進めないと子孫が大変なことになる。
たしかに、この材料は凄い。PV値が900MPam/minとは神の領域。金型屋だけに使わせておくのはもったいない。
その材料のPV値はなんと900MPam/minと驚異的な数値らしいですね。今後が楽しみです。
わたしもSMAGICの凄さを遅ればせながら知りました。なんとPV値が驚異の900MPa/minもあるそうですね。これなら高性能な風力発電用のベアリングができそうだ。
今や時代は低粘度オイルの時代ですから、境界潤滑状態がふえるし、極圧添加剤もSOxの環境問題で入れられないとなると高PV値材料の重要性はますます増えるでしょうね。
素晴らしい全体最適な設計が可能になる。
それにしても日立金属製スーパー工具鋼、SLD-MAGIC(S-MAGIC)の自己潤滑性は自動車関係者で話題になっていますねえ。なにしろ表面に吸着した有機物をボールベアリング状のナノ結晶にすることで、PV値が900MPa・m/minと通常の鉄鋼材料の6倍というチャンピオンデータをたたき出しているらしいから。