「四次元の時空間結晶、実際に作れる」バークレー研究所が作製方法を提起

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米ローレンス・バークレー国立研究所が、時空間結晶(四次元結晶)を実験的に作製する方法について提起している。時空間結晶とは、粒子の規則的配列が三次元空間内に加えて時間方向にも広がっている四次元の結晶構造。これまでは数学上の理論として考察されてきた。実際の作り方が検討されたのは今回がはじめてという。Physical Review Letters に論文が掲載されている(リンク先は arXiv )。

(a) 空間・時間ともに周期的な構造をもつ時空間結晶 (b) 極低温のイオンリングが最低エネルギー状態で一方向に回転することで時空間結晶の状態となる (source: Xiang Zhang group)

時空間結晶という概念は、マサチューセッツ工科大学の物理学者 Frank Wilczek 氏(2004年に「素粒子間の強い相互作用の理論」でノーベル物理学賞受賞)が今年の初めに提案していた。Wilczek 氏は時空間結晶の具体的な実現方法については言及しなかったが、バークレー研究所は、イオントラップ技術を用いることで時空間結晶が実際に作製可能であるとした。

三次元空間での結晶化とは、ある物質の分子系から熱を取り去って低エネルギー状態にしたときに起こる連続的な空間対称性の破れを意味する。物質中の全方向に対して対称的だった構造が、低温に置かれることで壊れ、離散的対称性(ある特定方向だけに対称となること)が現れる現象が結晶化であると説明できる。時空間結晶とは、この離散的対称性を時間方向にも拡張した構造であり、結晶にみられる規則的パターンが、空間だけでなく時間的にも周期性をもって現れることになる。

例えば、摩擦ゼロの状態で永久に円運動を続ける粒子は時間方向に結晶化していると見ることができる。バークレー研究所のチームが提起している時空間結晶では、極低温下での電界イオントラップと粒子間クーロン斥力を利用することによって、トラップされたイオンが永久に回転運動し、その構造が時間上で周期的に再現されるようになる。このような時空間結晶は、量子エネルギー状態が最低になっているため、時間的秩序が永久に保たれ、理論的には宇宙のその他の部分がエントロピー増大による熱平衡状態(熱的死)に達した後にも結晶が持続すると考えられるという。

今回の論文の筆頭著者 Tongcang Li 氏は、「時空間結晶は永久運動機関のようにみえるので、一見怪しい感じがするかも知れない」とした上で、時空間結晶では量子エネルギー状態が最低となっており、エネルギー出力がゼロなので永久機関ではないと指摘する。

時空間結晶の実際的な意味としては、多数の粒子間の相互作用を扱う多体問題を研究する上で重要な手段となり得るということが挙げられる。また、量子もつれなど、量子論的現象の研究にも利用できる可能性がある。時空間結晶の性質を調べることで、相転移や対称性の破れといった現象への理解が深まることも期待される。

「二次元のグラフェンや一次元のカーボンナノチューブ、ゼロ次元のフラーレンなど、低次元系結晶材料に関する物理学はここ数十年で大きな進展を遂げている」と Li 氏。「三次元よりも高次な結晶の創出というアイデアは、物理学にとって重要な概念的ブレークスルーであり、時空間結晶の実現方法をはじめて考案したのはとても刺激的なことだ」と語る。研究チームは、この方法で実際に時空間結晶を作ることが可能であると考えており、適切なイオントラップ施設と専門知識を持った協力者を探しているとのこと。主要な課題は、イオンリングを基底状態まで冷却する技術であるとしている。


発表資料

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  1. ピンバック: 9月29日 | Pacocat's Life

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