NRL、苛酷な宇宙放射線に対するCNTトランジスタの耐性を実証

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海軍研究試験所(NRL)が、苛酷な宇宙環境に対するカーボンナノチューブ・トランジスタの耐性を実証したとのこと。トランジスタの結晶構造への電離放射線の影響を調べた。単層カーボンナノチューブ(SWCNT)をベースとするナノ電子デバイスが厳しい放射線環境において有用であることを示している。

バックゲート型電界効果トランジスタ(FET)の構造。放射線の影響によるしきい値電圧変動とリーク電流の増加を軽減するために、バックゲートFETの活性領域でSiO2層を部分的にエッチングしてからゲート絶縁膜(赤色)を基板全体に成膜している (Photo: U.S. Naval Research Laboratory)

宇宙用電子デバイスは、地球を取り囲む荷電粒子帯の放射線を長期間浴び続けることになるため、その影響を軽減することが大きな課題となっている。放射線の影響には、一時的影響と累積的影響がある。一時的影響としては、宇宙空間の電離粒子が直接衝突することによるデバイス内でのパルス電流の発生がある。パルスが回路内を伝播した場合、データが破損し、GPSをナビゲーションに使っている人などに重大な被害が及ぶ可能性もある。NRLの最近の研究では、SWCNTを用いたナノ電子デバイスがこうした一時的影響を受けることはゼロに近いと予想されている。その理由は、デバイスのサイズが小さく低密度であること、デバイス内でSWCNT同士が分離されていることなどであるという。

従来の電子デバイスに対する累積的影響は、デバイス中の酸化物における電荷トラップから生じる。酸化物には、ゲート酸化膜やトランジスタ相互間の絶縁膜などがあり、最先端のCMOSデバイスにおける放射線由来の性能低下の主要原因となっている。累積的影響は、トランジスタのオン・オフ切り替えに必要なしきい値電圧の変動として表れる。

NRLの研究チームは、シリコン酸窒化膜から作ったゲート酸化膜を備えたSWCNT構造を開発することによって、こうした放射線に起因する性能変化がSWCNTトランジスタではほとんど起こらないことを実証している。絶縁体である酸化膜ともともと単離している1次元のSWCNT構造によって、SWCNTトランジスタには非常に高い放射線耐性が与えられるといえる。

放射線の一時的および累積的影響に対するSWCNTトランジスタの耐性から、次世代の宇宙用電子デバイスでは、忠実性を維持しつつ、冗長性やエラー補正回路をより少なくできる可能性がある。これらの面でコスト削減ができれば、SWCNTトタンジスタの動作速度が既存のトランジスタと変らない場合でも、大幅な消費電力削減と性能向上につながると考えられる。将来、SWCNTトランジスタがシリコンの性能を凌駕するようになれば、さらに大きなメリットが出るとみられる。


発表資料

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