MIT、トポロジカル絶縁体内の電子の動きを3D動画化。フェムト秒スケールの時間分解能

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マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、トポロジカル絶縁体内の電子の動きを高速で観察する方法を開発したとのこと。トポロジカル絶縁体の一種 Bi2Se3 における電子の挙動を数フェムト秒(1フェムト=1000兆分の1)の時間分解能で3D動画化し、パルス光に反応して電子が散乱する様子を捉えた。

パルスレーザー光によるエネルギーの入力に電子が反応する様子を表した3D画像。横軸は電子の運動量、縦軸は電子のエネルギーを表している。画像は左上から右下に向かって時系列で並んでいる。2番目の画像の一瞬前にパルスレーザーが到達し、エネルギーレベルが突然爆発的に高くなっているのが分る (Images by Yihua Wang and Nuh Gedik)

トポロジカル絶縁体の研究とデバイス応用を進める新技術として注目される。2012年9月20日付 Physical Review Letters に論文が掲載されている。

バルクのトポロジカル絶縁体は、電子の流れをほぼ完全に遮断する絶縁体であるが、その表面は金属のように電子が自由に移動できる良好な伝導体として振舞う。伝導度は通常の金属よりも高く、電子が質量をもたない状態(ディラック・フェルミオン)となって光速に近い速度で動けるようになり、通常は電子の動きの妨げとなる材料中の不純物の影響もなくなる。こうした特性から、トポロジカル絶縁体は電子回路やデータ保存デバイス用の有望な新材料とみられているが、デバイス開発を進めるためには、材料表面および材料内部の電子の動きや、表面-内部における電子の相互作用について、より深い理解が必要となる。

今回開発されたトポロジカル絶縁体内の電子の3D動画生成技術は、ポンプ・プローブ法と呼ばれる手法の応用であるという。ポンプ・プローブ法では、短いパルスレーザー光によって材料にエネルギーを与えて電子を散乱させ、次に時間をわずかにずらした第2のパルスを当てることで画像を生成する。「最初のパルスが電子に作用し、そこで起こったことを第2のパルスで捉える」と研究リーダーであるMITの物理学準教授 Nuh Gedik 氏は説明する。

第2のパルスレーザーを当てるタイミングを数フェムト秒ずつ遅らせながらこのプロセスを繰り返すと、それぞれの瞬間における電子の反応を示す画像が得られる。これらの画像を組み合わせると、電子の反応が時間の経過とともに変る様子を示す動画を作ることができる。

Gedik 氏の説明によると、現在使われている最高速の撮像システムの露光時間は数百ピコ秒(数兆分の1秒)だが、研究チームが観測しようとしていた電子の動きはあまりにも速いため、「5ピコ秒程度ですべてが起こってしまう」とのこと。新技術を用いることによって、このような極めて短い時間での電子の挙動を捉えられるようになったことで、これまで知られていなかったトポロジカル絶縁体の表面と内部の間での電子の相互作用が発見されている。この相互作用が音波(音響フォノン)によって媒介され、高温ではより強い相互作用が生じることも分っている。3D動画によって、材料表面の電子が材料内部に向かって散乱していく様子をリアルタイムで視覚化できるようになったことは、トポロジカル絶縁体を理解する上で非常に重要である、と Gedik 氏は述べている。


発表資料

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