IBM、ナノグラフェンの炭素結合手をAFMで画像化。結合手の長さまで識別

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IBMが、分子の結合手を1本ずつ識別する技術を開発したとのこと。原子間力顕微鏡(AFM)を用いる。これにより、分子や原子を最小スケールで利用し、グラフェンデバイスを広帯域無線通信やディスプレイなどの分野に応用する研究が進むものと期待される。2012年9月14日付の Science に論文が掲載されている。

蘭CIQUSで合成されたナノグラフェンのAFM像 (Credit: IBM Research - Zurich)

「私たちは結合手を識別するための2つの異なったコントラストの仕組みを解明しました。1つは、結合手上で測定される力のわずかな差に基づくコントラストです。こうしたコントラストがあることは予想されていましたが、これまで解像するのは困難でした」とIBMの科学者 Leo Gross 氏は話す。「もう1つのコントラストの仕組みは、まさに驚くべきものでした。第一原理計算の助けを借りると、一酸化炭素(CO)を材料とするAFM探針先端の傾きから、AFMによる測定で結合手の長さの違いがわかります。この違いからコントラストが生じるのです」

論文では、フラーレンC60の個々の炭素-炭素結合における結合次数と結合長が画像化されたことが報告されている。また、2つの平面的な多環芳香族炭化水素(PAH)についても同様に結合手が画像化されている。PAHは、グラフェンの小さな断片に似た構造で、その合成は、蘭サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学の生物化学・分子材料研究センター(CIQUS)と仏トゥールーズの国立科学研究センター(CNRS)が行った。

仏CNRSで合成されたナノグラフェンのAFM像 (Credit: IBM Research - Zurich)

 
こうした分子における炭素原子の個々の結合手の長さと強度は、それぞれ微妙に異なっている。これらの差異は結合次数の概念によって予測される。分子の化学特性、電気特性、光学特性など重要な特性はすべて、多環芳香族系の結合手の差異と関連性がある。個々の分子および結合手における差異が検出されたのは、今回が初めてであるという。これによって個々の分子レベルでの基礎理解が進むことは、新規の電子デバイス、有機太陽電池、有機ELなどの研究にとって重要な意味を持つ。具体的には、グラフェンの欠陥付近での結合手の緩和や、化学反応と励起状態における結合手の変化が観測されている。

今回IBMチームは、以前の研究でも利用したことがある探針先端に1分子の一酸化炭素(CO)を用いたAFMを使って研究を行った。このCO探針は試料上で微小な振幅で発振しており、分子などの試料と探針の間に働く原子間力を測定することで、結合手を含む分子の原子構造を画像化することができる。これにより、原子の直径のほぼ1/100に相当するわずか3ピコメートル(3×10-12メートル)という結合手の差異を識別できるようになったという。

同チームの先行研究では、分子の化学構造の画像化に成功していたが、結合手の微妙な差異までは画像化できていなかった。結合次数を区別することは、AFMの電流分解能の限界に近い作業であり、結合次数に関連するコントラストがその他の影響で不明瞭になってしまうことも多い。このため、研究チームは、撹乱要因となるバックグラウンドの影響を除外できるように分子を選択して合成しなければならなかった。

実験結果の裏づけを取り、コントラストのメカニズムの正確な性質を考察するために、研究チームは第一原理による密度汎関数理論計算を行った。撮像中の探針先端におけるCO分子の傾きを計算することで、この傾斜によってどのように倍率が得られ、結合手の鮮明な画像化ができるかを明らかにしたという。


発表資料

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