自然エネ大量導入で電力網への影響は? マックス・プランク研究所が分析 ・・・ 意外な問題も浮上

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マックス・プランク研究所が、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーを大量導入した場合の電力網への影響について研究。これまで予想されてきたのとは異なる分析結果を報告している。分散型の自然エネルギーが電力網の安定性に与える影響は、従来考えられていたほど深刻ではないと評価。むしろ安定性を向上させる面もあるとする。一方、「送電線の追加によって電力網全体の送電容量が減る」という逆説的な効果もあるとし、分散型ネットワークを構築する際には送電線の敷設を慎重に行うべきであると指摘している。

現在の電力網では、大規模発電所で集中的に発電し、その周囲へと電力供給を行っている。小規模な分散型の自然エネルギーが導入された次世代の電力網では、懸念されているのとは逆に、今日の電力網よりも停電に強いネットワーク構築ができるようになるという (Copyright: designergold, based on outlines provided by the MPI for Dynamics and Self-Organization)

大規模発電所を中心とする現在の電力網では、発電所・送電網・末端の電気機器が周波数50Hz(または60Hz)のリズムで同期して安定性を保っている。今後、太陽光発電、バイオガス、風力発電などの小規模の分散型自然エネルギーが大量に導入されることで、電力網の安定性はどのような影響を受けることになるのか? 周波数同期による安定性確保は非常に難しくなると考える専門家もいるが、独ゲッティンゲンのマックス・プランク研究所でネットワーク・ダイナミクスを研究している Marc Timme 氏らのチームは、分散型電力網において周波数同期を取ることは従来予想されてきたよりも容易であるとみている。多数の発電機を伴う電力網が、共通する交流電流のリズムを見つけるからであるという。

青色の送電線のうちの1本が断線してもネットワーク全体が停電することはまずあり得ないが、赤色の送電線の断線では50%程度の確率で全面的な停電が起こる可能性がある (Copyright: Dirk Witthaut and Marc Timme / MPI for Dynamics and Self-Organisation)

 
Timme 氏らは、小規模の発電機と電力使用者からなる密度の高いネットワークについてシミュレーションを実施した。計算モデルとして英国全土の電力網を選び、電力網に接続されるすべての発電機と電気モーターの発振を考慮にいれた。これまで、50Hzの交流電流の発振によるダイナミクスのシミュレーションについては、小規模なネットワークに関するものしかなかった。また、大規模な電力網に関する既存のシミュレーションは、A地点からB地点までの送電量を見積もるといったネットワークの静的特性を予測するためにしか使われておらず、発電機と電気モーターの発振については無視されていたという。

シミュレーションは、構造の異なる多数のネットワークについて行われた。大規模発電所と小規模な発電機、容量の異なる送電線から構成される多様な組み合わせを分析することで、集中型電力網と分散型電力網の違いを明らかにしていった。

ネットワーク内のある1本の送電線が損傷・故障した場合、集中型電力網ではドミノ倒し効果が起こる可能性がある(実際に2006年にはドイツ北部の1本の送電線の断線から欧州全土での停電が生じた)。今回のシミュレーションでは、周密なネットワークの場合ダウンした送電線の近傍にある別の送電線で負荷を肩代わりできる可能性が高いため、分散型電力網のほうが個々の送電線の断線に対してより堅牢になるという結果が示された。広域でメッシュ化されたネットワークの場合と異なり、分散型電力網には、電力網全体の機能停止を招く可能性を持つような必要不可欠な主要系統がほとんどないといえる。

とはいえ、再生可能エネルギーの拡大は、電力供給ネットワークの安定性の面での課題も抱えている。別のシミュレーションでは、高度な分散型電力網が電力消費の大きな変動の影響を受けやすくなることが示されている。例えば、数百万人が同時に洗濯機を回し始めた場合などである。大規模発電所は、発電機の回転によって蓄えられる運動エネルギーが大きいため、小規模な発電設備と比べて需要変動に対するバッファを設けやすい。こうした特性を利用して突発的な変動に対応するというオプションは、太陽電池にはない。

「Braess のパラドックス」によれば、点線で示した部分に新しい送電線を引くことでネットワーク全体で送電が乱されるという (Copyright: Dirk Witthaut and Marc Timme / MPI for Dynamics and Self-Organisation)

 
同じ数学的モデルを使ったもう1つの研究では、他にも直観に反するような影響があることが明らかにされている。道路交通に例えると、新しい道路を作ってネットワークの総容量を増やすことが必ずしも交通の流れの改善につながらないという問題である。交通量は変らないのに道路を増やしたことでかえって道が混雑がすることもある。新しい道路が多くのドライバーに近道を提供するが、その道が以前は避けられていた隘路につながっているといった場合にこうしたことが起こる。

今回の研究では、「 Braess のパラドックス」として知られるこの状態が、電力網、特に分散型ネットワークでも起こり得ることが示されている。自己同期している周密なネットワークは新規の連係に対しても同期しやすいと考えられるが、常にこれが成り立つとは限らない。新しい送電線を追加することで、自己同期が崩れる場合もあるという。


発表資料

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