ハーバード大、20倍以上伸びる丈夫なハイドロゲル材を開発。人工軟骨に応用可能

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ハーバード大学の研究チームが、非常に丈夫でよく伸びるゲル材を開発したとのこと。新材料はハイドロゲルの一種であり、元の長さの21倍に引き伸ばすことが可能な上、丈夫で自己修復能力があり、生体親和性も高いという。

ハイブリッドゲルの両端を固定して引っ張ったところ、元の長さの21倍に伸びるまで断裂しなかった (Credit: Jeong-Yun Sun)

ヒトの関節部で損傷した軟骨を代替できる可能性がある。2012年9月6日付の Nature に論文が掲載されている。

従来のハイドロゲルは非常に弱く壊れやすいが、水をベースとしており生体親和性が高いという特性がある。このため、圧縮応力や引張応力がかかっても壊れずに伸ばすことができるハイドロゲルを開発し、人工軟骨や人工椎間板に応用しようという研究が進められてきた。

こうした新規ハイドロゲルを作り出すために、研究チームは今回、2種類のよく使われるポリマーを組み合わせたハイブリッドゲルの開発を行った。第1の材料は、ソフトコンタクトレンズの材料として知られているポリアクリルアミドで、バイオ系の研究室では、DNAフラグメント分離用の電気泳動ゲルとしても使われている。第2の材料はアルギン酸塩で、こちらは食べ物にとろみをつけるために使われる海草エキスである。

これらのゲルは、どちらも単体では非常に弱い(アルギン酸塩の場合、元の長さからわずか1.2倍伸ばしただけで破れてしまう)。しかし、2つの材料を8:1の比で混ぜると、2つのポリマー鎖を交差結合した複雑なネットワークが形成され、互いに相手を補強しあうようになる。このネットワークの化学構造によって、広い面積にわたって分子同士がほんのわずかしか引き離されないようになるため、ゲルの破断が起こらなくなるという。

(a)ポリアクリルアミド単体のゲル、(b)アルギン酸塩単体のゲル、(c)ポリアクリルアミドとアルギン酸塩のハイブリッドゲル。ピンク色で示した部分は、それぞれ亀裂の先端付近に広がる可塑的な領域を表している。(c)では複雑な分子構造のによって、広い範囲にストレスが散らされる。赤い丸はカルシウムイオン、青い三角と緑の四角形はポリマー鎖間の共有結合による架橋部を表す (Credit: Jeong-Yun Sun and Widusha R. K. Illeperum)

ハイブリッドゲルのうちのアルギン酸塩成分は、弱いイオン結合を形成するポリマー鎖から構成されており、プロセス中でカルシウムイオンを捕獲する。ハイブリッドゲルが伸ばされると、ポリマー鎖間の結合のうちいくつかが破断され、カルシウムを放出する。その結果、ゲルはやや膨張するが、ポリマー鎖自体は損傷を受けずに済む。一方、ポリアクリルアミド鎖は格子状の構造を形成し、アルギン酸塩鎖と強固に結合する。

(左)かみそりの刃で2cmの切れ目をいれたハイブリッドゲル。(右)このように切れ目が入った状態でも17倍に伸ばすことができた (Credit: Jeong-Yun Sun)

ポリアクリルアミドの格子構造には、鎖を破断させる引張力を広範囲に散らす働きがある。このため、引き伸ばしているうちに大きな亀裂が入った場合であっても、ハイブリッドゲルは元の長さの17倍まで伸ばせるという。

ハイブリッドゲルの重要な性質として、多数回の引き伸ばし後もその弾力性および剛性が維持されているという点が挙げられる。引き伸ばしの間にゲルが緩和する時間を設けてあげると、アルギン酸塩とカルシウムの間のイオン結合が修復されるようになる。このプロセスは、周囲温度を上げることで加速されることが分っている。

今回の研究では、力学と材料科学、それに生体工学の専門家が協働することによって、「亀裂の架橋」と「エネルギー散逸」という力学上の2つの概念を新しい問題に適用できるようになったとしている。研究チームは、人工軟骨以外にも、軟体ロボット工学、光学、人工筋肉、傷口の保護材など幅広い分野に新規ハイドロゲルが応用できると考えている。


発表資料

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