シンガポールA*STAR、生体細胞に対するグラフェンの毒性を研究

このエントリーをはてなブックマークに追加
Share on Facebook

シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)が、グラフェン材料の人体への毒性に関する調査を行っている。A*STAR傘下のシンガポール製造技術研究所 Jun Wei 氏らの研究チームでは、グラフェンやグラファイトが生体細胞に与える影響について、大腸菌を使って観察している。

写真上:酸化グラフェンによる細胞の包み込み。下:酸化グラフェン還元物の凝集体にトラップされた細胞 (出所:A*STAR)

2011年に ACS Nano に掲載された論文では、グラファイト、酸化グラファイト、酸化グラフェン、酸化グラフェン還元物の4種類の材料について、大腸菌に対する毒性を比較。その結果、最も毒性が高かったのは酸化グラフェンであり、次いで酸化グラフェン還元物であったと報告している。これら2つのグラフェン材料は、グラファイト材料に比べて大幅に高い毒性を示したという。

Wei 氏らは、グラフェン材料の毒性が粒子サイズと関係していると見ている。動的光散乱法による測定から、4種類の材料のうち酸化グラフェンが最も粒子サイズが小さいことが分かっている。酸化グラフェン還元物は、平面方向および3次元方向のどちらにも凝集しているので酸化グラフェンよりはサイズが大きくなると考えられる。

研究チームは、酸化グラフェンと酸化グラフェン還元物における粒子サイズの違いから、これらの粒子が大腸菌に影響を与える方法も変わってくるとしている。粒子サイズの小さな酸化グラフェンでは、大腸菌の細胞全体が包み込まれる。一方、酸化グラフェン還元物の場合は、凝集物の中に細胞がトラップされ埋め込まれる様子が観察されている。後者と同様の細胞トラップ機構はグラファイト材料でも働くという。

細胞トラップよりも細胞の包み込みのほうが毒性が高くなる理由は、細胞表面とグラフェンの直接接触によって細胞膜にストレスが加わり、不可逆的な損傷を引き起こすためであると考えられている。

また、研究チームは、これらの材料が細菌を破壊し殺傷するときの化学的なメカニズムについても調査を行った。その結果分かったことは、グラファイトおよび酸化グラフェン還元物に接触することによって、細胞中の重要な抗酸化物であるグルタチオンが酸化するということだった。「グラファイトや酸化グラフェン還元物の構造が導電性の架橋体として働くことにより、グルタチオン分子から電子が取りだされ外界に放出されていると思われる」と Wei 氏は言う。

興味深いことに、細胞膜破壊メカニズムが培養後4時間後には消失していったのに対して、酸化メカニズムにはごくわずかな変化しか見られなかったという。「この研究から得られた知識を基に、グラフェンの官能基密度やサイズ、伝導度といった物理化学的特性を調整することによって、環境リスクの低減や応用可能性の拡大を行うことができるだろう」と Wei 氏はコメントしている。


発表資料

おすすめ記事

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...