KAST、有機系太陽電池の特性評価法の確立めざす

このエントリーをはてなブックマークに追加
Share on Facebook

神奈川科学技術アカデミー(KAST)の有機系太陽電池評価プロジェクトでは、色素増感太陽電池や有機薄膜太陽電池などの性能評価、有機系素材の基本特性評価、有機系太陽電池の要素技術の開発・評価といった課題に取り組んでいる。本稿では、同プロジェクトの最近の研究成果の1つである有機系太陽電池のキャリアライフタイム評価について、KAST 有機系太陽電池評価プロジェクトの酒井宗寿氏への取材を基にまとめる。なお、同プロジェクトは、内閣府による研究支援プログラムの1つとして採択されたプログラム「低炭素社会実現に資する有機系太陽電池の開発(研究代表者 東京大学教授 瀬川浩司氏・共同提案者 東京理科大学学長 東京大学特別栄誉教授 藤嶋昭氏)」の一環として運営されている。

有機系太陽電池のキャリアライフタイム計測法の開発 (出所:KAST)

キャリアライフタイムとは、太陽電池に光が当たってキャリア(電子またはホール)が励起されてから、キャリア再結合によって消滅するまでの時間を表しており、太陽電池の変換効率に大きく影響する重要な値である。シリコン系太陽電池のキャリアライフタイム測定には、主にマイクロ波光導電減衰法(μ-PCD法)と呼ばれる手法が用いられており、製造ラインでのセルの歩留まり把握などに利用されている。

一方、有機系太陽電池については、シリコン系のような確立されたキャリアライフタイム測定法がないのが現状である。有機系太陽電池の性能を向上させ、実用化を進めるためには、電気特性などの評価方法の確立が不可欠となる。そこで、今回のKASTの研究では、μ-PCD法の有機系太陽電池評価への適用が検討された。有機系太陽電池の空間的な電気特性分布特性を知ることを通して、未知の部分が残る発電機構の解明や、欠陥検出を可能にすることをめざすという。

μ-PCD法を用いる際の実験装置概念図 (出所:KAST)

μ-PCD法とは、測定対象のセルにマイクロ波を当てたときに返ってくる反射波の信号強度の変化を測定することによってキャリアの状態を調べる方法である。セルにレーザー光をパルス照射してキャリアを生成させると導電率が増加し、その後は再結合によるキャリアの消滅に伴って導電率が基底状態に緩和していく。マイクロ波の反射強度はセルの導電率に依存するので、反射強度の変化を基にキャリアライフタイムを計算することができる。

今回の研究では、有機系太陽電池にμ-PCD法を適用するための測定装置側の条件についても検討を行っている。例えば、励起光であるパルスレーザーの波長は、有機系太陽電池の吸収波長に合わせて波長532nmとし、パルス幅6ns、強度50μJ、繰り返し周波数8Hzに設定した。また、マイクロ波の周波数によって反射強度の変化の仕方は異なるので、キャリアライフタイムの測定を行いやすい周波数を選ぶ必要がある。今回は広範囲の抵抗率に対応できる10.0~10.5GHz帯(Xバンド)を使用したという。

この方法による実際の測定例を下図に示す。フラーレン誘導体であるPCBMの含有率0.4の有機薄膜太陽電池を測定したもので、レーザー照射後にマイクロ波の反射強度が増加し、40μs程度で完全緩和する応答が観測されている。この信号変化はキャリアに由来するものであると考えられるという。

μ-PCDにより得られたPCBM含有率0.4のときの応答 (出所:KAST)

現段階の研究は、シリコン系の測定装置で有機系太陽電池を測るとどのような結果が得られるかを検証したところ。研究チームでは今後、装置条件のチューニングを重ね、有機系太陽電池向けに最適化された評価方法を確立していきたいとしている。(取材・執筆 / 荒井聡)


>> JASIS 2012 特設ページTOPへ戻る

おすすめ記事

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...