ナノフォトン、ナノカーボン材料分析にラマンイメージングを活用

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ナノフォトンは、独自開発のライン照明技術を用いてラマン画像の高速取得と高画質性能を両立したレーザーラマン顕微鏡を中心に最先端の理化学機器事業を展開している。本稿では、同社 マーケティングマネージャー 内山知也氏とアプリケーションエンジニア 久保田直義氏への取材を基に、ラマンイメージングによるナノカーボン材料の分析事例についてまとめる。また、同社がJASIS2012に出品する最新製品も紹介する。

図1 グラフェンの積層構造評価 (出所:ナノフォトン)

レーザーラマン顕微鏡のしくみ

試料の分子に光があたったときの散乱光には、分子の振動によって周波数変調されたラマン散乱と呼ばれる成分が含まれている。このラマン散乱を分光分析することで試料の組成、結晶構造や化学構造などの分析を行うことができる。ただし、従来のラマン分光分析は局所的な微小領域に適用される手法であり、試料の広い範囲を分析する場合には多数の測定ポイントを1点ずつ走査するため、測定に非常に長い時間を要するという問題があった。同社では、レーザービームをライン状に形成、高速走査することで光の出力強度を平均化する独自のライン照明技術によって、ライン上のラマン散乱を多点同時検出する手法を開発。従来は数十時間かかっていた測定をライン走査に置き換えることで数分程度に短縮した。この技術を高画質のコンフォーカル光学系と組み合わせて製品化したレーザーラマン顕微鏡は、半導体や二次電池、無機材料、高分子・生体材料など幅広い分野で利用されるようになっている。

ナノカーボン材料の分析事例

広い範囲のラマンイメージを高速で取得できるレーザーラマン顕微鏡は、グラフェンやカーボンナノチューブなどのナノカーボン材料にも適した分析手法であるといえる。

ラマン分光によるグラフェンの分析の一例として、グラフェンの積層構造を評価したデータがある。グラフェンの層数は、トランジスタなどのデバイスにグラフェンを応用する上で非常に重要な要素となる。ラマン分光を調べることで何層のグラフェンが重なっているのかを知ることができる。図1は、スコッチテープ法で作製された市販品のグラフェンのラマンイメージである。ラマンシフト1585cm-1付近にあるピーク(Gバンド)と2700cm-1弱にあるピーク(G´バンド)に注目して2つのピークの強度比G´/Gを取ると、この値がグラフェンの層数に比例するという。単層グラフェンの場合、G´バンドのピークが強く出て、Gバンドのピークがやや弱くなる。グラフェンの層数が増えるにつれて、Gバンドが強くなり、G´バンドが弱まっていく。この方法で、一般的に5層程度までの層数を識別できるとされている(参考資料:単層・多層グラフェンのラマンイメージング)。

グラフェンの端部(エッジ)には、ジグザグ型とアームチェア型という2つのタイプがあり、エッジ構造の制御もデバイス応用上の重要課題となっている。ジグザグ型とアームチェア型は、ラマンシフト1350cm-1辺りに現れるピーク(Dバンド)を見ることで識別できる。アームチェア型の場合はDバンドにピークが出るが、ジグザグ型ではピークが出ないという。図2のラマンイメージは、赤い部分がG´バンドの強度分布、緑がDバンドの強度分布を表しており、緑の部分にアームチェア型のエッジ構造が存在していることが分る。

図2 ラマンイメージングによるグラフェンのエッジ構造評価 (出所:ナノフォトン)

 

図3 CVDグラフェン成長領域の高速イメージング (出所:ナノフォトン)

 
最近では、CVD法による大面積グラフェン作製技術の開発が活発に進んでおり、CVD用の基板材料の評価など様々な要素技術の研究でもラマンイメージングが用いられるようになっている。図3は、エピタキシャル成長ニッケル薄膜上にCVDで成長させた多層グラフェンのラマンイメージである。多層グラフェンがニッケルの結晶粒界(双晶境界)に沿って形成されており、結晶粒塊表面には形成されていない。これは炭素の偏析によるものと考えられる。一方、結晶粒塊表面には単層グラフェンが形成されており、このことから、CVD法によるグラフェン作製では、触媒金属の双晶抑制が、グラフェンの均一成長にとって重要であることが分る。なお、このサンプルは、パナソニック株式会社先端技術研究所が作製したものであり、ナノフォトンの装置で分析を行っている。詳細は、2011年6月7日付の Nano Letters(オンライン版) に論文が掲載されている。

操作性を一新した新製品「RAMANtouch」

ナノフォトンでは、これまでのレーザーラマン顕微鏡の高速・高画質性能に加え、iPadなどを活用した革新的な操作性を実現する新製品として「RAMANtouch」を発表。2012年9月5日から販売を開始する。

RAMANtouch (ナノフォトン)

RAMANtouch の特徴のひとつは、iPadによるリモートコントロールである。すべてのプロセスをワイヤレスで実行可能で、マルチタッチの活用により、操作はどれも極めて直感的なものに仕上がっている。

RAMANtouchのもうひとつの特徴は、徹底したオートメーションとスピード。新開発ソフトウェア「Laurus(ローラス)」を開くと数秒で装置に接続し、光学顕微鏡観察が開始できるほか、照明強度の調光・キャリブレーション・複数個所の測定といった各種機能の自動化や、データ処理方法の改善によるイメージングの高速化やGPU対応によるデータ処理の高速化を実現。また、ワンクリックでパワーポイント形式のレポートを作成する機能の実装など、作業効率の向上を徹底させた。

データ管理については、LAN接続されたiPadやパソコン上から「測定者」「サンプル名」「測定項目」「測定条件」といった検索条件によって必要なデータにすぐにたどり着ける新システム「CyGaarden(サイガーデン)」を導入した。また、オペレータが測定している際に、観察している顕微鏡画像や測定条件設定の様子、測定中のデータはどのようなスペクトルかなどを、iPadやほかのパソコンを通してどこからでも遠隔確認できるオペレーション・シェアリングの機能も付与した。

センチメートル規模の大面積観察「RAMANview」

RAMANview (ナノフォトン)

「RAMANview」は、より広い範囲を粗く観察したいというニーズを受けて開発された新しい広視野ラマンスコープである。実体顕微鏡技術を応用することで、最大2.5cm角の超広視野のラマンイメージングを実現している。すでにサンプル測定の受付を開始しており、発売は2013年1月で発売予定価格は1500万円。今回、JASIS2012に参考出品する。

焦点深度が640μmと深く、広範囲でピントが合った画像を得られるので、凹凸のある試料の測定にも適している。測定中の時間経過に伴って焦点がずれて測定結果に影響が出るステージドリフトの問題も、深焦点深度によって回避されている。

対物レンズの作動距離が最大約7cmと長く取られていることも同製品の特徴である。作動距離0.1cm程度だった従来の顕微ラマン対物レンズでは、深くくぼんだ試料の測定は物理的にできなかったが、超長作動とすることでサンプルが対物レンズに当たることがなくなり、問題なく測定できる。

センチメートル規模でのラマンイメージングの応用例としては、錠剤全表面や鉱物表面などの成分分布観察、SiC結晶中の多形分布観察、樹脂成形品の結晶化度分析やダイヤモンド工具の結晶品質分析など、幅広い用途が想定されている。同社では、まだ気づかれていない潜在的用途が数多くあると見ており、これからマーケティングを重ねることで販売へとつなげていきたいとしている。(取材・執筆 / 荒井聡)


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