SIIナノテク、蛍光X線分析装置を電池材料や食品安全分野で展開

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エスアイアイ・ナノテクノロジーは、分析・計測・観察分野で用いられる顕微鏡や分析装置などの開発・製造を行っている。本稿では、同社の蛍光X線分析によるソリューションとして、リチウムイオン電池の金属異物検出システム「SEA-Hybrid」とコメ中のカドミウム検査用分析装置「SEA1300VX」の技術概要をまとめる。

リチウムイオン電池の金属異物検出システム

金属異物検出システム「SEA-Hybrid」

リチウムイオン電池を車載用途で使う場合には、民生用リチウムイオン電池と比べて、より高い安全性の確保が要求される。民生用電池でたびたび報告されてきた発熱・発火事故は、自動車では許されないため、電池の品質管理は非常に厳しいものとなる。

発熱・発火の主な誘因として、電池の内部短絡(ショート)がある。内部短絡の原因はいくつか考えられるが、正極板に混入した金属異物からの析出物がセパレータを貫通することによる正極と負極の短絡もその1つである。このため、電池の製造時には電極材料やセパレータに含まれる金属異物の検出・管理が重要な課題となる。

代表的な金属異物の測定・分析手法としては、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析、電子顕微鏡(SEM)観察+エネルギー分散型X線分析(EDS)、顕微鏡観察+SEM-EDS、顕微鏡観察+蛍光X線分析(XRF)などがある。しかし、それぞれに課題があり、これがベストという方法はない。

ICP発光分光分析では、小さな異物が多数ある場合と、大きな異物が少数ある場合の区別をつけるのが難しいという問題がある。どちらの場合も異物の濃度としては同じ数値になるが、内部短絡のリスクは大きな異物のほうが著しく高い。また、鉄とSUSなど、異物の種類を見分けられない場合もある。

SEMや顕微鏡などを用いる手法は、観察範囲が局所的になるため、異物を探し出すのに長い時間がかかる。また、試料表面にある異物は見えるが、内部に埋没した異物を見つけることができないという問題がある。

こうした課題を解決する方法として、同社では、金属異物の自動検出・自動元素同定システム「SEA-Hybrid」を提案している。同システムを使うことにより、表面付近だけでなく試料内部の深い位置にあるものも含めて広範囲での金属異物検出を短時間で行うことができるとする。A4サイズの範囲から20μmの異物を検出する場合、従来機(SEA6000VXF)では10時間程度かかっていたが、SEA-Hybridでは数分間で検出可能となっている。

SEA-Hybrid の測定機構 (出所:SIIナノテクノロジー)

 

aligncenter”” 透過像の取得による異物検出 (出所:SIIナノテクノロジー)

 
同システムの特徴は、透過X線による撮像と蛍光X線による元素分析を組み合わせて用いるところにある。まず、透過像によって試料中の金属異物らしき部分をマークする。250mm×200mmの範囲の透過像を数分程度と短時間で取得できる。分解能はマイクロフォーカスX線CTと同程度であり、20μm径程度からの異物を検出可能。実際に電池の内部短絡で問題となる50~60μm径の大きさの異物については確実に検出できる。

金属異物らしきものが見つかったら、その部分を位置精度よく狙って蛍光X線分析にかけ、元素マッピングを行う。異物がありそうな場所を素早く見つけ出し、その部分だけを重点的に分析するというフローを全自動化することで、飛躍的な時間短縮が可能になっている。レポートの自動作成機能も備えており、作業の効率化を実現している。電池の製造工程では、同システムによって金属異物の大きさ・個数・種類に関するデータを継続的に蓄積していくことで、異物管理の基準策定や故障解析など、歩留まり向上に向けたデータ利用ができるようになるという。

元素マッピング分析 (出所:SIIナノテクノロジー)

 

異物のサイズと個数 (出所:SIIナノテクノロジー)

 
コメ中のカドミウム検査用分析装置

カドミウム検査用の蛍光X線分析装置「SEA1300VX」

 
コメに含まれるカドミウムについては、食品衛生法の基準値が従来の1ppmから0.4ppmに改正され、2011年2月末から施行されている。コメの流通現場では、カドミウム測定作業も秋の収穫繁忙期に集中する傾向があり、より厳しくなった新基準に対応した測定を短時間で効率的に行いたいとするニーズが強い。こうしたニーズに向けて、同社では、コメに含まれるカドミウム検査用の蛍光X線分析装置「SEA1300VX」を製品化している。

SEA1300VXによるカドミウム検出では、従来の蛍光X線分析装置と比べて100倍の検出強度が実現されている。カドミウムの含有濃度が基準値の0.4ppmを超えている場合には、コメにX線を照射したときに発生するKα線に明瞭なピークが現れる。感度の向上は、自社開発の高計数率・高分解能検出器の搭載をはじめ、装置設計やソフト面の最適化によって実現したという。

微量カドミウムの高感度測定 (出所:SIIナノテクノロジー)

 

自動補正による定量値算出 (出所:SIIナノテクノロジー)

 
測定の迅速化にも取り組み、基準値0.4ppmの有無を数分間で判別できるようにした。また、オートサンプラ機能を備えることで、試料交換のために作業者が待機する必要をなくしたことにより、最大90検体の連続測定が可能となっている。1か月間で5000検体程度まで検査可能とすることで、収穫繁忙期の大量測定のニーズに対応している。

カドミウムの測定はICP発光分光分析や原子吸光分析などでも行えるが、これらの方法は分析に時間がかかる上に前処理が必要であり、誰でも簡単にできる作業ではなかった。そこで、前処理を行わなくても0.4ppmのカドミウム測定ができるようにしたことも、SEA1300VXの大きな特徴である。

具体的には、試料が粒なのか粉なのかといったコメの状態に影響されて分析結果に変化が出ることがないように、取得したデータに対して含水率やコメの形状・充填率による濃度補正をかける技術を開発した。従来は、検量線用の標準試料として用いられる米粉と条件を揃えるため、コメを粉末状に砕いて溶液に溶かす必要があったが、データの補正機能を持たせたことで米粒のままでも測定できるようになった。粒径による測定誤差は2%以下とされており、どんな形状のコメであっても常に安定した検査が行えるようになっている。

Cd強度の試料粒径依存性 (出所:SIIナノテクノロジー)

 

XRFとICP-OESとの相関性 (出所:SIIナノテクノロジー)

 
なお、同装置はカドミウムの検出に特化してチューニングされているが、原理的には他の元素も測定することができる。今後はコメ中のヒ素の測定などもニーズが出てくるとみられることから、同社ではヒ素向けのソフト整備なども行っていきたいとしている。(取材・執筆 / 荒井聡)


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