アジレント、食の安全性向上に向けて多様な分析手法を提供

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アジレント・テクノロジーは、ガスクロマトグラフ(GC)、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)、液体クロマトグラフ(LC)、LC/MS、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)、核磁気共鳴装置(NMR)などの各種分析装置を化学分野・ライフサイエンス分野の幅広い用途に向けて提供している。本稿では、同社 化学分析本部市場開発部門の瀧川義澄氏、小川裕之氏への取材を基に、食品安全分野における分析装置・分析技術の動向をまとめる。

農薬分析の技術動向

図1 GC/MS/MS分析によって野菜抽出液中の360種類の農薬を測定 (出所:アジレント・テクノロジー)

農薬の分析では、主に揮発性化合物には、GC、GC/MS、トリプル四重極GC/MS(GC/MS/MS)などを使った分離・分析技術が用いられている。GC検出器では選択性のあるNPD(窒素リン検出器)、FPD(炎光光度検出器)、ECD(電子捕獲検出器)などが用いられる。GC/MSでは、マススペクトルの情報から、分子量や分子構造などの推定ができ、また選択的にある特定の質量を測定することもできることから、近年では多成分同時検出が可能なGC/MSを用いた一斉分析が主流である。

GC/MS/MSでは、GCで試料を分離してから、直列結合した2台の質量分析装置(MS)を使って分析する。まず1台目のMSでイオンの選択を行い、コリジョンセル(衝突活性化室)にイオンを導く。コリジョンセル内に導入したガスとイオンを衝突させ、衝突誘起解離(CID: Collision induced Dissociation)を起こし、二次的に生じるプロダクトイオンを2台目のMSで分析する。夾雑成分の多い試料に対して選択性の高い分析を行いたいときに効果を発揮する方法であるといえる。

食品中にppmオーダーで含まれている多種類の農薬成分をその他の夾雑成分から分離し、精密かつ短時間で特定するといった場合には、GC/MS/MSによる分析が用いられる。図1に、GC/MS/MS分析によって、野菜抽出液に含まれる360種類の農薬を測定した例を示す。上段のクロマトグラムの11.5~14.3分の範囲を拡大したものが下段のクロマトグラムである。同時に溶出する様々な種類の農薬成分が精密に定量されていることが分る。

四重極飛行時間型質量分析装置「Agilent 7200 Q-TOF」

 
最近、特に注目されているのが、四重極飛行時間型質量分析装置(Q-TOF)を使った分析であるという。飛行時間型(TOF: Time of Flight)の測定では、同じ運動エネルギーを与えたときのイオンの移動速度が、軽いイオンほど速く、重いイオンほど遅くなることを利用している。イオンが同じ距離を移動した場合には、イオンの重さによって検出部までの到達時間が変るので、距離を長く取ればとるほどイオンの質量差を細かく分離した高分解能での検出ができるようになる。

例えば、CO、N2、C2H4の整数質量はどれも28だが、精密質量は、CO=27.9949、N2=28.0062、C2H4=28.0312となるので、分解能を高めれば分離測定できるようになる。元素組成が異なると精密質量に違いが出るため、化合物の組成を特定しやすくなる。同社では2011年に、GC専用のQ-TOFである「Agilent 7200 Q-TOF」を製品化。農薬分析など食品分野でも、母材の夾雑成分からの干渉を排除した選択性の高い測定ができることに関心が集まっている。

食品の毒性分析技術

図2 カビ毒アフラトキシンの測定事例 (出所:アジレント・テクノロジー)

 
カビ毒、魚介毒、アレルゲンなど、食品に含まれる毒性物質の分析には、LC、LC/MSなど液体系の分離・分析装置が用いられる。試料を流すときの圧力や流速、カラムのサイズ、粒子径などの要素に影響されて測定データが変動することのないように、正確な保持時間と高い定量精度が要求されている。

図2に、2011年に日本での規制方法が変更されたカビ毒アフラトキシンの測定事例を示す。従来アフラトキシンB1だけが規制の指標となっていたが、現在は、B1、B2、G1、G2の総和(総アフラトキシン)を指標とするように規制方法が変更されている。上段の図は、濃度1ppbのB1、B2、G1、G2を含む抽出液をLC/MS/MSで分析したもの。下段は、濃度2.5ppbの同位体標識したB1、B2、G1、G2を含む抽出液を同じくLC/MS/MSで分析したものである。どちらの場合も、B1、B2、G1、G2すべてのアフラトキシンについて、複数のイオンによる定量・確認が行われている。

食品中に含まれるヒ素(As)、スズ(Sn)、水銀(Hg)など毒性元素のモニタリングには、ICP-MSによる無機分析が有効である。微量な複数元素を高速で分析できる。GCおよびLCとICP-MSを組み合わせたシステムが提案されている。

多変量解析による産地判別技術

図3 ICP-MSによる米の主成分分析の例 (出所:アジレント・テクノロジー)

 
食品の安全性にかかわる問題として、産地判別技術も重要なテーマとなっている。食品の産地を判別するには、遺伝子情報に着目する手法、窒素や酸素の同位体を調べる手法、作物に含まれる金属元素を分析するなど、いくつかのやり方がある。

農作物は、土壌や原木に含まれる金属元素なども吸収しながら成長するため、これらの元素の存在の有無や含有量の多寡を分析することで、産地をある程度推定できる場合がある。図3に、ICP-MSによる米の主成分分析の例を示す。日本を含む4か国の米が分析されており、日本の試料はA国、C国の試料と明瞭に区別できていることが分る。B国の試料は日本のものとよく似たスコアプロットとなっている。主成分分析は、多変量解析と呼ばれるデータ解析手法の1つで、数値データから分散を最大にするように変量を合成し、その変量を集約してデータ間の類似度を解析する統計学的手法である。

GC/MS、LC/MSやICP-MSで得られたデータを多変量解析する技術は、食品分野でもここ数年活発に利用されるようになってきている。多変量解析は、多量のデータの中から相関関係や差異を見つけ出すのに有効な方法であり、クロマトグラムからは分りにくい分析結果を視覚的に非常に見やすく表示させることができる。同社では、多変量解析ツールとして「Agilent Mass Profiler Professional(MPP)」を製品化しており、産地判別の他、異臭分析、劣化指標探索、不純物解析、バイオマーカー・未知物質探索などでの膨大なピークデータの解析に利用されている。(取材・執筆/荒井聡)


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