RPI、グラフェン負極でリチウムイオン電池の充放電速度を10倍高速化

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レンセラー工科大学(RPI: Rensselaer Polytechnic Institute)の研究チームが、酸化グラフェンから作った「紙」をリチウムイオン電池の負極材として使うことで、電池の出力密度が大幅に向上したと報告している。グラフェンの紙に光を照射することで紙全体に無数の空隙を形成した。これにより、従来のグラファイト負極に比べて充放電速度が10倍高速化したという。2012年8月11日付の ACS Nano に論文が掲載されている。

光熱作用で還元されたグラフェンのSEM像。層間にすきまが空いたグラフェンシートのネットワーク構造が形成され、リチウムイオンが効率よく出入りできるようになるという (出所:レンセラー工科大学)

リチウムイオン電池はエネルギー密度が高く、大容量での蓄電が可能なため、車載用途ではEV/HEVの航続距離を伸ばすことができる。一方、出力密度は低いため、急速充放電には向いていないとされる。充電に時間がかかることは、EV/HEVの普及を阻む要因の1つとなっている。

今回の論文によると、グラフェン負極を用いた場合、充放電レート40Cでの1000サイクル以上の充放電試験において、容量密度156mAh/g、出力密度10kW/kgの性能が安定して得られたという。グラファイト負極に比べてエネルギー密度を落とさずに高い出力密度を実現していることになり、急速充電可能な車載用リチウムイオン電池への応用が期待される。

従来のグラファイト負極の出力密度が上がらない理由は、リチウムイオンがグラファイト負極の端部からしか出入りできず、グラファイトを構成する個々のグラフェン層をゆっくりと通過していくためであると考えられる。この問題を解消するため、研究チームは今回、大面積の酸化グラフェンの紙を形成する技術を利用した。

酸化グラフェンの紙は、通常のプリンタ用紙と同じくらいの厚さがあり、大きさや形状は自由に加工できる。この紙にレーザー光またはデジタルカメラのフラッシュライトを照射すると、紙全体にわたって光熱に起因する亀裂、空孔、ボイドなど無数の欠陥が生じる。また光熱作用で還元された酸素の圧力によって紙の厚さは5倍ほども膨張し、グラフェンシート間に多数のボイドを形成する。

こうした欠陥の存在によってリチウムイオンの層間移動速度が上がり、グラフェン負極の出力密度が向上すると考えられる。写真は、光熱作用で還元されたグラフェンのSEM像。酸素の放出によって膨張した構造が見られる。層間にスペースが空いたグラフェンシートのネットワーク構造が形成され、より多くの電解質に浸されることで、リチウムイオンが効率よく出入りできるようになるという。研究チームは、グラフェン負極を用いたリチウムイオン電池で100Cを超える超高速充放電も可能になるとしている。


発表資料

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