米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)が、燃料電池自動車と水素供給インフラに関する7年間の実証評価プロジェクトを終了。最終報告書を公開している。同プロジェクトでは、燃料電池車による50万回超の試験走行を実施。総走行距離360万マイルにおよび、水素の総供給量は15万2000kgに達したとのこと。ここから得られたデータは、NREL 水素安全データセンター(HSDC)によって分析され、複合データプロダクト(CDP: composite data products)として一般公開されるという。
すでに99種類のCDPが発行されており、そのデータは燃料電池の耐久性、燃料電池車の航続距離、オンサイトでの水素製造コストなどをはじめ、多岐の項目にわたっている。なお、HSDCの管理下にある生データについては非公開扱いとされている。
NREL 燃料電池・水素技術プログラム部長代理で報告書の筆頭執筆者である Keith Wipke 氏は「プロジェクトの結果から燃料電池車の進歩が急速に進んでいることが分る」と話す。「今後数年以内に燃料電池車の市場投入がはじまる」と見込む。
2003年、米国エネルギー省(DOE)は、燃料電池車と水素燃料インフラに関する高度技術目標を暫定的に設定。このときには、2009年までに以下の数値を達成することが目標とされていた。
今回のプロジェクトに参加した民間企業4チームのうち少なくとも1チームは、航続距離および電池耐久性に関する目標をクリアしたとしている。あるチームでは、航続距離254マイルを記録。あるチームでは、燃料電池スタック平均耐久時間2521時間を記録した。また、最終報告書の評価では、燃料電池車1台の単独航続能力は最長430マイルに達するとされた。
低圧でのオンサイト水素製造コストに関しては、今回のプロジェクトによる実証は困難だったとしている。これは、現在の水素ステーションがフルスケールの商用ステーションとしては設計・構築・運用されていないためである。DOEの水素製造コスト目標を今回のプロジェクトでクリアすることはできなかったものの、独立した評価パネルが行った検証によれば、ガソリンステーションと同等規模の商用水素ステーションにおいて、少なくとも1種類の水素製造経路(=天然ガスからの水素製造)についてはコスト目標を満たすことが可能であるとの結論が出ているという。
2004年に始まった同プロジェクトには、自動車メーカー4社(GM、ダイムラー、ヒュンダイ-キア、フォード)とエネルギー関連3社(シェル、BP、シェブロン)が参加し、NRELに分析用データを提供。その後、エアプロダクツ&ケミカルズを実施者とするDOEカリフォルニア水素インフラプロジェクトも参加し、水素ステーションに関するデータを提供した。プロジェクト全体で運用された燃料電池車は183台。設置された水素ステーションは25か所であった。「プロジェクトを通して、安全性に関する根本的な問題は見受けられなかった」とWipke氏はコメントしている。
発表資料
おすすめ記事
- 米NREL、太陽電池製造工程での熱処理を革新する「光共振炉」開発。製造コスト低減と変換効率向上に期待
- 太陽熱発電は電力網の安定化に有効 ― NRELが報告
- 米国Semprius、高効率集光型太陽電池の低コスト生産技術を確立。再生可能エネルギー研究所が変換効率41%確認
- 「1W=50セントも可能」 Ampulseら、結晶シリコン太陽電池の新製法でコスト大幅削減
