米サンディア研究所、洋上風力発電向けに垂直軸タービンの再評価進める

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米サンディア国立研究所が、洋上風力発電向けに垂直軸風力タービンの再評価を進めている。米国エネルギー省(DOE)の要請を受け、5年間で予算410万ドルのプロジェクトが2012年1月から開始されている。洋上風力発電のいくつかの課題を解決するために垂直軸風力タービンが役立つかもしれないという。

洋上における水平軸・垂直軸風力タービンの比較 (Illustration by Josh Paquette and Matt Barone)

垂直軸風力タービンの特徴は、大きく分けて次の3つがある。

  • タービンの重心の位置が低い
  • 機構が複雑でない
  • 大型化に向いている
  •  
    タービンの重心の位置が低いということは、洋上に浮かべたときの安定性が高いことを意味する。また、重力による疲労荷重を低くできる。加えて、動力伝達機構が海面近くにあるため、メンテナンスが容易に行える。メンテナンス時間も短縮できる。これらは総じてメンテナンスコストの軽減につながる。

    垂直軸風力タービンの部品点数を少なくできる理由は、風が吹いてくる方向にタービンを向かせるための制御システムが不要になるため、とプロジェクトの主任調査官の一人 Josh Paquette 氏は説明する。

    垂直軸風力タービンのこうした特性は、洋上風力発電における設計上の制約事項(支持構造に高いコストがかかること、単純で信頼性の高い設計が要求されること、陸上風力発電よりも大型の装置が必要なことなど)に適合するものであるとする。

    300mを超える大型の洋上向け垂直軸風力タービンブレードは、陸上の風力タービンよりも製造コストがかかるが、装置および基礎がより大型化して10~20MW規模に近づくにつれて、タービンおよびローターがシステムコスト全体に占める割合は非常に小さくなっていく。このため、ローターのコスト増が垂直軸風力タービンの他の利点で相殺できるようになるという。

    とはいえ、垂直軸風力タービンを大規模洋上発電用に実用化するには、まだ多くの課題が残されている。

    湾曲した垂直軸風力タービンブレードは複雑で製造が難しい。このため、非常に長いブレードをつくるには、いくつかの技術革新が必要になる。もう一人のプロジェクト主任調査官 Matt Barone氏によれば、複雑な形状のタービンブレードをこれまでにない大きな規模で、ただし許容できるコストで製造可能にするための新技術については、研究パートナーであるアイオワ州立大学とTPI Compositesが取り組むことになるという。

    垂直軸風力タービンブレードでは、動力伝達装置にかかる繰り返し負荷に付随する問題も解決しなければならない。風速が安定している限りトルクも安定に維持される水平軸風力タービンと異なり、垂直軸型では、ブレードの位置が風上になるときと風下になるときの違いによって、トルク・力が2つのパルスになるという性質がある。「トルクの波(リップル)」は不安定な負荷をもたらし、動力伝達装置の疲労につながる可能性がある。今回のプロジェクトでは、こうしたトルクの振幅の増幅を平滑化する新設計のローターの評価も行う予定とのこと。設計に際しては大幅なコスト増加が起こらないようにするという。

    1980年代末、サンディア国立研究所が試験用に設置した垂直軸風力タービン。テキサス州ブッシュランド (Photo by Randy Montoya)


     
    第1世代の垂直軸風力タービンブレードの開発が終了したのは数十年前のことであるため、設計のアップデートにあたっては、すでに水平軸タービンの設計に組み込まれているその後の数十年間の研究開発成果を反映させる必要がある。垂直軸型の研究再開においては、タービン設計作業のスピードアップを促すモデルの考案が重要になる。

    「既存の航空力学と構造力学のコードを合成・強化するようなツール開発を行って、垂直軸風力タービン向けに誰でも利用できる航空力学設計ツールを作り出すことが、この研究の取り組みを支えることになるだろう」とBarone氏は話す。

    制動にも課題がある。旧型の垂直軸風力タービンのデザインには、航空力学的な制動システムが備わっておらず、機械式制動システムに依存していた。水平軸型で使われている航空力学的な制動システムと比べて、機械式制動システムはメンテナンスが難しく、信頼性が低い。

    水平軸風力タービンで使われているピッチ制御可能なブレードは、1~2回転でタービンを止めることができ、タービンにダメージを与えることもない。また、複数の冗長性を持たせた二重安全設計に基づいている。Barone氏によれば、新設計の垂直軸風力タービンには堅牢な航空力学的制動システムが必要であり、そのシステムは高信頼性かつコスト効率が良いものでなければならない。また、今日の水平軸風力タービンのように二次的な機械式制動も備えることになる。ただし、水平軸型と違ってブレードのピッチ制御による制動は行わないという(この方法には、信頼性とメンテナンスに関する別の問題がある)。

    風力エネルギーの研究が初期段階にあった1970~80年代、風力発電機としての垂直軸風力タービンの開発は活発に進められていた。奇妙な外観にかかわらず、水平軸型と比べて単純で信頼性が高いなど、多くの利点があったためである。しばらくの間、水平軸型に引けを取らない時代が続いた。

    その後、風力タービンが大規模化し、陸上で1~5MW規模になると、ローターのコスト面から水平軸型が有利になった。このため、15年ほど前から水平軸型のほうが主流技術となっている。しかし、今日また状況が変りはじめ、垂直軸型にも風が吹いてきているようである。


    発表資料

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