独FAU、高性能グラフェンSiCトランジスタを開発

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フリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルク(FAU)の研究チームが、グラフェンとシリコンカーバイド(SiC)を用いた高性能トランジスタの製造プロセスを開発したとのこと。2012年7月17日付の Nature Communications に論文が掲載されている。

グラフェンSiCトランジスタのイメージ。電子(青)がグラフェン・コンタクト(黒)からSiC結晶に向けて流れ込んでいる。SiCの特性は水素処理されたグラフェン・コンタクト(赤/黄)によって制御される (Image: J. Jobst, S. Hertel)

FAU 応用物理学教授 Heiko Weber氏らのグループは、2009年、SiC層の上に大面積のグラフェンを作製する手法を考案していた。ただし、このときのグラフェンは特性上、高性能トランジスタに利用することができなかった。

Weber氏らは今回、SiCを絶縁層に用いる代わりに、導電層として利用することでこの問題を解決したとする。複雑な構造と水素処理によって、SiC/グラフェン界面を操作し、高速・高性能なトランジスタを形成できるようになった。最も重要な技術革新は、「SiCとグラフェンというどちらも堅牢な2つの材料だけでトランジスタを構成している点」であるとWeber氏は話す。この技術は、個々のトランジスタ設計にも使えるし、大規模な回路を開発する場合に使うこともできるという。

論文によると、作製されたトランジスタ単体の性能はオン/オフ比10000超。メガヘルツ領域の周波数における信号減衰も見られないとする。

エピ成長させた2種類のグラフェン材料から構成したモノリシック・トランジスタ (H.B. Weber et al., Nat. Commun.2012 doi:10.1038/ncomms1955)


 
今回のトランジスタの概念を図(a)に示す。基本構造は金属半導体電界効果トランジスタに類似している。グラフェンがトランジスタのソース・ドレイン・ゲート電極を形成し、SiC基板が半導体チャネルとなる。電荷はグラフェン層に流れ込み、SiC層がソース・ドレイン間の電流をスイッチングする。従って、グラフェン層には、SiC層への良好なキャリア注入特性が必要とされる(研究チームはこれを「コンタクト・グラフェン」と呼ぶ)。

熱分解によってn型SiC上にグラフェンを成長させた場合に得られるn型単層グラフェンとn型SiCの界面が、コンタクト・グラフェンとして有効なものとなる。この界面には、ソースおよびドレインのオーミック・コンタクトが形成される。図(b)に示すように、電気的に活性なグラフェン層(常温での電子密度n = 1013cm-2、電子移動度μe = 900cm2Vs-1)が、不活性な炭素のバッファー層とともに存在している。SiCの最も外側にあるシリコン原子の一部が、バッファー層の炭素原子と共有結合し、他の一部はバッファー層の下で未結合手を持つようになる。未結合手が存在することで、グラフェンの電子系におけるフェルミ準位のピン止め効果が生じる。

一方、ゲート電極には絶縁特性に優れた「ゲート・グラフェン」が必要となる。ゲート・グラフェンは様々な方法で作製可能であるが、研究チームが今回用いたのは、図(c)に示すように単層グラフェン層とSiCの間に水素をインターカレーションすることで、n型SiC上に準自立二層グラフェン(QFBLG: quasi-freestanding bilayer graphene)を形成する方法である。850℃程度の水素雰囲気中での処理によって、SiCとグラフェンの間の共有結合は切断され、未結合手には水素原子が結合する。このとき、バッファー層が新たなグラフェン層となって追加されることにより、正の電荷を帯びた二層グラフェンが形成される。論文では、常温での正孔密度p = 1013cm-2、正孔移動度μh = 2000cm2Vs-1と報告されており、QFBLGがSiCとのショットキー・コンタクトを形成するため、ゲート・グラフェンとして機能するようになる。図(d)は今回作製されたデバイスの断面SEM像で、スケールバーは100μm。


発表資料

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