泳ぐ人工クラゲ、ラットの心筋組織とシリコーン高分子を使って作製・・・ハーバード大とカリフォルニア工科大

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ハーバード大学とカリフォルニア工科大学の共同研究チームが、ラットの心筋組織とシリコーン高分子を合成して、クラゲのように泳ぐ人工生命体を作製したとのこと。クラゲの泳動を定量的に解析・再現しており、バイオ分野でのリバース・エンジニアリングを進める研究として注目される。2012年7月22日付の Nature Biotechnology に論文が掲載されている。





“Medusoid” と名づけられた人工クラゲ。ウェブで公開されている動画を見ると、実際のクラゲの動きがかなり忠実に再現されていることが分る。論文の共同執筆者でハーバード大学 生物工学・応用物理学教授の Kevin Kit Parker氏は、「生体組織・器官を複製しようとする研究は、これまでのところ非常に定性的なものとなっている」と指摘している。それぞれの研究者が複製に利用しようとしているコンポーネントが、目的とする機能に対して適切なものであるのかといった考察や、他にどんな種類の材料が使用できるかといった分析が必ずしも行われていないという。

海水を模した容器内で泳ぐ人工クラゲの静止画像 (Source: Harvard University and Caltech)

そこで今回の研究では、クラゲのポンプ運動の定量的な分析を行うことを重視した。分析ツールとして、警察で使われているバイオメトリクスや、動物の筋細胞内のタンパク質ネットワーク構造を図像化する結晶学的な手法を援用し、クラゲが推進するときの電気生理学的なトリガーおよび推進運動自体の生体機構の解明を進めた。

こうした考察に基づき、研究チームは、培養されたシート状のラットの心筋組織(液中で電気刺激を加えると収縮)が人工クラゲの材料として最適であるとの結論を得たという。これにシリコーン高分子を加えることで、8本の腕状付属器官を備えたクラゲ型の薄膜を形成した。出来上がった人工クラゲは、このような比較的少数の構成要素から作られているにもかかわらず、生きているクラゲの泳動や捕食行動といった複雑な動きを再現することができた。

Parker氏の研究には、細胞の遺伝子的操作に集中している従来の合成生物学に対する挑戦という意味合いもあり、人工細胞に代わって「人工動物」を作ることを狙ったという。研究チームは今後、人工クラゲを進化させ、方向転換や特定の方向への移動などができるようにするという。さらに、シンプルな「脳」を組み込むことにより、周囲の環境に反応したり、光に向かって泳いだり食糧を探したりといったより高度な行動の模倣もめざすとしている。


発表資料

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