製造装置市場は2013年前半に好転か
アプライド マテリアルズ(AMAT)は、2012年7月20日、都内でメディア向けブリーフィングを行った。アプライド マテリアルズ ジャパン代表取締役社長 渡辺徹氏から市場概況と業界動向についてのプレゼンテーションがあり、その後セミコンウェスト2012で発表した製造装置について技術担当者からの説明があった。
渡辺氏によると、2012年の半導体製造設備への投資は全世界で300億~330億ドルになる見込み。モバイル機器が市場の押し上げ要因となる一方、マクロ経済の先行きへの懸念、PCの売上低下などの押し下げ要因もある。2013年前半の半導体製造装置の市場環境は、ファウンドリー、ロジック、NANDフラッシュメモリ、DRAMの主要4セグメントのすべてで、2012年後半に比べて好転すると見ている。
プロセス世代が28nmから20nmへと進む過程で、製造装置への新たな投資が行われることになる。具体的に、月産ウェハー10万枚のファウンドリーを想定すると、トランジスタ工程で7~9億ドル、配線工程で2~3億ドル、実装工程で1~2億ドルの追加投資が必要になるという。
エッチング装置「Centura Avatar Etch」
NAND型フラッシュメモリの微細化が進み、配線寸法10nm代のプロセスが使われるようになると、従来からの2次元方向への集積化では電荷の保持が難しくなってくる。このため、メモリセルの2次元配列を縦方向に折りたたんで3次元的に集積化する3D NANDフラッシュを実用化する動きが加速している。3D NANDフラッシュの概念は2007年に東芝が発表したもので、将来的にはペタバイト級の記憶容量を実現することも可能な技術であるとされる。
今回発表された「Avatar」は、3D NANDフラッシュ製造用に開発されたエッチング装置であり、32層、48層、64層でのメモリ積層に対応している。3D NANDフラッシュ特有のエッチング工程としては、(1)マスクとして使われるアモルファスカーボン膜(APF)への穴あけ、(2)縦方向のトレンチ(溝)形成、(3)縦方向に深くまっすぐ貫通するチャネルホールの形成、(4)縦方向に集積化された個々のメモリセルに電気を流すための階段状コンタクトの形成などがある。工程(2)では、1ダイあたり数百万本のトレンチを切る。工程(3)と(4)では、それぞれ1ダイあたり数十億個の穴をあける必要がある。
APFマスクのエッチングでは、アスペクト比20:1程度の穴あけを高速で行う。また、APFマスクの下に続く層のエッチングも装置を変えずに続けて行うことができる。深い穴あけも途中で幅が広がることなく、微細でまっすぐな穴を掘り進めることができる性能を実現している。
ゲートトレンチの工程では、垂直方向に30:1、水平方向に50000:1の高アスペクト比の構造を形成する。トレンチの形状は、幅70nm×深さ3μm×長さ数百μmとなる。プラズマで生成したイオンに対して非常に高いバイアス電圧をかけるため、イオンの直進性が向上し、最後までまっすぐな形状のトレンチを切ることができる。また、高い電圧をかけることでウェハー温度が上昇し、エッチングの反応性に影響することがあるため、これを避けるように温度安定性を高めたとする。チャネルホールの形成にも同様の技術が使われている。
階段状エッチングでは、30:1から80:1までの幅広いアスペクト比の構造を同時に形成する。穴の口径は55~65nm、ピッチは200nmとなる。1層目は非常に浅い位置でエッチングを止め、他方で下層に対しては深くまっすぐなエッチングを行う。これらをすべて同時に処理するため、閉ループでのウェハー温度制御やポリマー制御などの技術が導入されている。
PVD装置「Endura Amber PVD」
20nm以降のNANDフラッシュでは、銅のバリアシード層をPVDで均一に成膜できたとしても、その後のめっき工程において銅配線内部にボイドが生じる可能性が非常に高くなることが問題となっている。ロジックデバイスでは線幅にはまだ余裕があるものの、配線密度が高くなり配線長も延びる中で、わずかなボイドの発生が歩留まり低下の要因となる。
PVD装置「Amber」では、選択的デポジション技術によって溝の底部に厚いバリアシード層を形成し、開口部のバリアシード層は薄くすることにより、リフロー後のボイド発生を防ぐことができるという。リフロープロセスでは、熱エネルギーをかけることで表面に堆積した銅が底部に移動し、ボトムフィルアップされる。このときに毛細管現象を利用しているのも Amber の特徴であるという。
欠陥検査装置「UVision 5 Inspection」
欠陥検査プラットフォーム「UVision」の最新版を発表した。光源には波長266nmのDUVレーザーを使用。レーザーを照射したウェハーからの散乱光を利用して欠陥検出を行う。散乱光の検出には光電子倍増管を使用。検出方式は、明視野とグレイフィールドを併用する。グレイフィールドでの最小画素サイズは100nmとなっている。
これらのコア技術によって、非常に小さな欠陥種の検出が可能となっている。明視野、グレイフィールドともに、入射光と集光に対して偏光をかけることができる。ノイズを半減するアルゴリズムによってSN比を高めることで、検出精度を上げた。デバイス設計時のCAD情報を使ってウェハー検査位置の指定もできるようにした。(執筆/荒井聡)
おすすめ記事
- AMAT、3次元NANDフラッシュメモリ向けの絶縁膜エッチング装置発表。80:1の高アスペクト比を実現
- AMAT、DRAM高速化のための新製造技術を導入
- エルピーダ破たんで2012年DRAM価格は15.5%上昇の可能性も ― IHSアイサプライが予測
- 「エルピーダ倒産、円高のせいではない」中央大・竹内健氏@ナノ・マイクロビジネス展記念講演会
